【罠にかかったのはどちらなのか】


「イイヒトー!メシ、メシくれニャスゥゥゥゥ!!!!」
「あ゛ーっ!もうついてくんな!俺はお前の相手してる暇ねーの!」

オリエントタウンから少し外れた路地裏が妙に騒がしかった。路地裏を駆け抜けるのはかの有名な賞金首、ラグナ。その後ろを追いかけるのはタオカカと数匹のチビカカ。2人と数匹(?)は路地裏を縦横無尽に走り回り、不毛ないたちごっこを続けている様にも見えた。

「全く、あの人は自分が賞金首だって事を忘れているのかなぁ?あれじゃ目立ってしょうがないよね、姉さん」

宿屋の窓から外を眺めながら、咎追いの少年、カルルがぽつりと呟いた。




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「つ・い・て・くんなあぁぁぁぁ!!!!!」
「ニャス、ニャスゥゥゥゥ!!!!!」
「あのー、猫さん?」

猛スピードで駆け抜ける2人の間にとカルルはするりと滑り込み、にこりと笑顔を作る。慌てて急停止するタオカカ、その後ろからチビカカが玉突き事故の様にトントンとぶつかってゆく。

「ニャッ!」
「ニャァ〜」
「ニャスゥゥ…」
「何だニャ?タオは今イイヒトからメシを貰うので忙しいんだニャ。カチンコチンには用が無いニャス!」

シッシッと手を振り追い払おうとするタオカカにカルルはこっそりと耳打ちをする。

「先程、ライチさんが呼んでいましたよ?確かご飯だっ…」
「ニャに!?ソレを早く言うニャ、カチンコチン!チビカカども、乳のヒトにメシ貰いに行くニャーッ!!!!」

ラグナを追いかけていた方向からグルリと180度回転し、来た時と同じく猛スピードでタオカカとチビカカは去っていった。

「愉快な猫さんだなぁ…そう思いません?ラグナさん」

タオカカを見送りながらそう言うが、背後から歩み寄るラグナはその問いかけに答える気力も無いと言わんばかりの深いため息を吐きその場に座り込んだ。


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「どうぞ」
「ん、あー…悪ぃ」

目の前に差し出されたグラスをぼんやりとラグナは眺める。相当疲れているのか手の動きも幾分か気だるげだ。

「お疲れ様です」
「あー、ホント、な」

再びため息をつき、ラグナはグラスに注がれた水を一気に飲み干す。
カルルの泊まる宿屋へ言われるがままに招かれたラグナ。喉を潤し、一息つきゆっくりと辺りを見回す。が、最高クラスの咎追いが泊まるには少々質素な所だと思った。街並みから見ればまだ見栄えが良いものの、内装は何度も補修した様な跡がいくつも見られた。

「あ、ラグナさん。お風呂…入ります?」

再び現れたカルルは普段のマントやボレロを全て脱ぎ、簡素なカッターシャツにズボンという随分ラフな格好になっていた。普段と違った見慣れない格好に少しどきりとしたが気のせいだと思いたい。

「先程かなり走ってたみたいですし…汗流した方が良くないですか?」
「あー、まぁ…そう、だな」

視線を彷徨わせながら、何とも歯切れの悪い返事を返すラグナにカルルは首を傾げる。

「どうかしました?」
「や、何でもない!…風呂、借りるぞ」

ずい、とカルルを押しのけラグナはバスルームへと駆け込む。その行動にクスリと笑みをこぼし、カルルは部屋のソファーに深々と腰掛けた。





「さてと姉さん、どうしようかな?」

そう呟いたカルルは遊び相手を見つけた無邪気な子供の様に目を輝かせていた。





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