小さな、ちいさな恋心。
それは芽吹く事無く、美しい氷の中へと閉じ込められてしまった。
そして別の形でその感情は芽吹いたのだった。



【めばえ】


「ほら、兄さん…そんなんじゃ全然楽しめないよ?」

ユキアネサを弄ぶ様にくるん、くるんと優雅に回すジン。その視線の先には戦う姿勢を崩さないラグナの姿。

「兄さんは甘いね。弟だから、たったそれだけの理由で剣筋が鈍ってしまう」

くるん、と遠心力でユキアネサを鞘から抜きラグナとの距離を詰める。
未だラグナは腰を落とし、大剣の構えから動く素振りを見せない。
にい、とジンの口が弧を描く。ラグナはまだ動かない。
ユキアネサの剣先がラグナの首元へと迫った瞬間、キインと硬質な音を響かせて弾かれる。

「ほら、ね?」

ジンが笑うと、ラグナの首から赤い液体が一筋流れ落ちる。

「ジン…テメェ」
「ほら、今だって」

そう言ってユキアネサを再び構え直すジン。

「僕に一撃が与えられた筈なのに兄さんは防ぐだけだった。ホント、甘いね」
「……っ!」
「でも、僕は違うよ」
「何が言いたい?」
「兄さんを躊躇わずに殺せる」

氷連双、と静かに叫べばパキリとラグナの足元が凍りつき、動きを封じる。
大きく舌打ちをして、その氷の拘束から逃れようとするが、それは鋼の足枷よりも堅く、大剣で叩いても傷ひとつ付ける事は出来なかった。

「無駄だよ。ユキアネサから生まれた氷は僕自身の意思でしか溶けない」

一歩一歩、ゆっくりと距離を詰めてゆくジン。距離が縮まるごとに足元の氷はラグナを呑みこんでゆく。

「だからね」

愛おしげに微笑むジンの先には大きな氷柱。

「この中で一生飼い殺しにしてあげる…」




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やっと、やっと手に入れた。
幼い頃から憧れて欲しくて仕方が無かった。

氷の中から芽吹いた新しい感情は、醜い独占欲。



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