エレン・イェーガーの調査兵団入り、特別作戦班・通称リヴァイ班の結成、彼らの旧本部への移動。挙げ句の果てに捕獲した巨人二体が殺され兵団内での犯人探しと、間を開けずの入団式。体を動かすことは少なくても精神的な疲労が伸し掛ってくる。一般兵、新兵は痛々しいほどその疲労の色を濃くしていた。
仕事量の多いエルヴィンや旧本部にいたリヴァイもそれは同じで、表情は変わらないがハルカも煙草の量が目に見えて増えている。

そんな調査兵団に少しでも気の休まる時を、と考えたハンジはミケと共にエルヴィンに掛け合い、兵士の士気向上と新兵歓迎会を兼ねた宴の席を設けたのだ。


「ということで、今日は大いに飲み食い語り合ってね!意思の疎通、信頼し合うことは作戦遂行においても重要だから!
ほら、ミケ!あなたから何かないの?」

「……スン」

「あーもう!では、新兵の皆と人類の未来に、かんぱーい!!!」

「「「かんぱーい!」」」


乾杯の声と共に騒がしくなった食堂には、普段の食事よりも遥かに上等で豊富な酒と料理が並んでいる。これらは八割方ある人物の、残りの微々たるものは私たち分隊長以上の者のポケットマネーで調達した。滅多にない豪華な食事に群がる兵士達の姿は、さながら人を前にした巨人のようで思わず笑ってしまう。

さっさと移動し始めるミケを追い食堂の隅に固まっている出資者達の元へ行くと、彼らは騒がしい兵士達を眺めながらグラスを傾けていた。

「やぁやぁ出資者の方々、今回は開催許可と資金提供ありがとう!」

「たまにはこういう息抜きも必要だからね。費用についてはハルカに言ってくれ。
私たちは雀の涙ほどしか出していない」

エルヴィンはそう言うと隣に座る今回の影の立役者、涼しい顔で八割も負担したハルカにありがとうと微笑んだ。

「ちょうど手元にあっただけだ。しかも俺の稼いだ金じゃない」

「…これだけの上等な食事代が“ちょうど手元にあった”というのが笑いどころか」

「いや“俺の稼いだ金じゃない”って所だ」

ミケと軽口をたたくハルカは貴族の出とは思えない皮肉を飄々と口にする。
そういえば彼の両親も風変わりな人だと聞いたことがあった。

「今更だけど、そんな高貴な家柄なのにご両親はハルカが調査兵団にいることどう思ってるの?」

踏み込んだ問いに割と繊細なリヴァイが眉を寄せるが、当の本人は本当に今更だな、と気にした様子もない。

「俺の親はその辺の豚共と違って真っ当な方々だからな。貴族暮らしに向いてない俺の希望を渋々ながらも受け入れてくれたし、入団してからは資金提供も始めた。
まあ、俺が仕送りを突っ返さないようにという意図が半分だが」

「そうなの!?素晴らしいご両親だ!」

「あぁ、特に父上が賢い人だ」

私の言葉に少し懐かしそうな顔をして頷く。きっと良い家族なんだ。貴族っていうとどうしてもいい印象がないのが調査兵団の風潮だが、彼のご両親のような人がいると知れてよかった。
と、じんわり温かい気持ちになっていたのに!!!

「ち、父上ってお前…たまに出るそういう上品さ、まじで気持ち悪ぃな、ハルカよ」

「悲しいことにな、俺はお前と違って育ちがいいんだよ、リヴァイ」

「育ちが良い奴は煙草咥えたまま喋ったりしねぇだろうが、この猫かぶり野郎」

「でもそんな俺が好きなんだろう?」

「ってめぇ…!」

「こらこら二人共、せっかくの宴なんだから穏やかにいこうじゃないか」

リヴァイが突っかかりハルカがニヤニヤとからかい、そしてリヴァイが青筋を浮かべる定番の流れ。間違いなく仲良しというか、きっとリヴァイが構って欲しくて始めるんだろうけど、ヒヤヒヤするからやめて欲しい。それを微笑ましそうに宥めるエルヴィンは、さすがは団長と言ったところか。器のデカさが違う。

「…懲りない奴らだな」

「全くだね…」

呆れたように目を伏せるミケに同意しながら、冷めないうちにと久しぶりの肉を頬張った。




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