Short×2+Story
短編未満とかネタメモとか。



「 螺旋が放り出した先に 」


即興小説トレーニング(15分)で書いたもの。多少修正済。

※お題「間違った螺旋」






間違っている。矛盾している。けれど。

「間違っているからこそ」

階段を昇る。昇る。走る音。靴の乾いた音がリズムをつけて近づいてくる。遠くにいても彼だと分かる。そのあわただしい音に愛おしさがこみ上げて、自然と笑みがこぼれる。病室の扉が乱暴に開かれた。

「行きたくない!」
「行きなさい」
「何で!」
「お前の居るべき世界は本当はここじゃなかった、それだけのことだ」

そう、ここではなかった。間違っている。世界に存在する矛盾は遅かれ早かれ排斥されていくのだ。遅かれ、早かれ。

「俺とアンタが、『魔王』と『勇者』とか意味が分からねえ」
「分からなくても世界は進むよ」
「ここでは、恋人なのに、嫌だ、そんなの」
「はは」

殺し合わなきゃだめなの、それでも、向こうに帰らなきゃ、だめなの。彼の姿が透けはじめる。ぼろぼろと子供のように泣く。幼い彼が私に愛をぶつけて世間体を気にしていた私もやがて押し切られてしまってそして、なんて、そんな軌跡も間違っていた。根本から間違っていたのだ。消えなくてはならない。

「なぁに、また会える」

世界は螺旋。無数に存在する螺旋は、それぞれ独立し、回転している。けれど、その螺旋から放り出されてしまう者が稀に存在する。それが私たちだった。
殺し合う定めだった。けれど平和な世界で私たちは。
間違っている。矛盾している。二人は出会うはずではなかった。二人は恋に落ちるはずではなかった。

「間違っているからこそ、矛盾しているからこそ、次に持てる期待もあるものさ」

また会おう、世界の螺子は旋廻して閉まる。天地が反転する。ねじれた角を生やした私の眼前、新たな螺旋は開かれる。


やがて、私は勇者と恋に落ちるだろう。




15.03.03 00:54  sato91go



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