Short×2+Story
短編未満とかネタメモとか。



「 ビッグバンセオリー 」


即興小説トレーニング(15分)で書いたもの。けっこう修正済。

※お題「愛と死の同性愛」






「……愛して、キスして、死ぬわけでもあるまいし」

彼は呆れたように言った。俺は宇宙を彷徨っている。上も下も右も左も音も声も光も闇も果てすらもない宇宙を、手探りで浮かんで、漕いで、彷徨っている。SOS、SOS、前方には、後方には、何が見えますか?何もありません。誰もいません。俺が一人で彷徨っているだけです。

「助けてくれよ」
「無理だ」

苛立ちに唇を噛んで、己の学生服の厚い布を思い切りつかむと丁度心臓の上だった。痛み苦しみ早鐘を打つ心臓だけがこの宇宙でたった一つ確かなものだ。怖い。嫌だ。怖い。SOS、SOS。メーデー、助けてくれよ。

「俺は宇宙で一人で独りでこんなにもさびしくて息もできなくて言葉を飲み込んで酸素は足りない光が救いが見える分海のほうがマシだいっそ海に沈めてほしい俺の心臓から鮮血が散って言葉になる前に俺をバラして蒼の奥深くまで沈めてほしい」

暗くも明るくもない、此処は虚無だ。ここから出る方法を俺は知っている。けれどその言葉を口にすれば死ぬのだ。俺は死んでしまうのだ。だからこそ、ここで飼い殺しにされているのだ。

「もう嫉妬もしたくない何故俺が何故なんて考えたくない何も何も」

嘘だ、これがあってもなくても俺は死んでしまうんだ。彼は笑った。

「俺には、お前の宇宙ってやつがね、どうにもこうにも見えねえんだよ。見えもしねえ場所からお前を救い出す手立てはあるもんかね。俺の前に居るのはただの俺の友達で、自分の首を絞めるのが好きなか弱い人間で、俺のことが一等好きな男で」

彼はとん、と眉間を小突いて俺の頭を引き寄せる。

「恋して、愛して、キスして、死ぬわけでもあるまいし。ここは孤独の宇宙なんかじゃあなくて俺とお前だけの教室だってのに」

だからもう、すべて洗いざらい俺にぶつけてしまえばいいのに。近くに見える彼の顔に心臓の血が飛び散る、幻想。夕暮れの教室、俺の頬を撫でる彼の笑顔が、現実。すき、好き、助けて、好き。吐き出せば、乱暴な人工呼吸が降ってきた。



15.03.03 00:50  sato91go



×