Short×2+Story
短編未満とかネタメモとか。



「 地獄になればいいのに 」


即興小説トレーニング(15分)で書いたもの。

※お題「ねじれた雨」






それは雨の日だった。たとんとんとん、空から水が降っていた。肌に纏わりつくセーラー服が鬱陶しい。

「好き」

私は誰にも聞こえないように呟いた。目を閉じれば、教室が逆さになって、机という机がひっくり返り、教科書という教科書が床になった天井に散らばった。降ってきた机で頭を打って、出血して地獄のようだ。彼女の落書きだらけのノートは開いて天を向いている。ドアはスライド式だったはずなのにドアノブ式に代わっていて固く錠前で鎖されている。たとんとんとん、雨音が全てを消していく。そうです、これは私の妄想です。ぱん、と一度手を合わせて、目をもう一度開けば、元通り。何も変わらない授業風景。何も変わらない教室。

「好き」

私はまた呟いた。目を閉じれば、地球が逆さになって、ビルというビルがひっくり返り、人という人が地面になった空に転がった。降ってきたビルで頭を打って、人はぱたりぱたりと倒れて地獄のようだ。その中で彼女は一人天を向いて立っている。足元から虹を吹きださせて、私に向かってにっこりと笑って、××ちゃん、と嬉しそうに私の名前を呼ぶ。彼女が私に手を伸ばす。どうしようもなく嬉しいのに、私は他の人間たちに鎖に繋がれて、空から動けないのだ。たとんとんとん、雨音が全てを消していく。

「そうです、これは私の妄想です」

ぱん、と一度手を合わせて、目をもう一度開けば、元通り。何も変わらない授業風景。何も変わらない教室。床は床で、地面は地面のまま、窓の外は変わらない雨空です。何も変わらない、私を見ない、彼女です。

「全て、私の、妄想です……!」

誰にも聞こえないように叫んだ。セーラー服なんて着ていたくなかった。斜め前の彼女の項を見つめる私の感情は、ずっと昔からねじれている。



15.03.03 00:41  sato91go



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