Short×2+Story
短編未満とかネタメモとか。



「 夜は烏龍茶で 」


即興小説トレーニング(15分)で書いたもの。多少修正済。

※お題:「誰かと酒」
※気持ち♂←♂






酒は好きじゃない。氷で薄くなった烏龍茶を見つめる。

「いつみても辛気臭えツラだよな」
「そういうお前は酒臭い」
「そりゃそうだ」

何がおもしろいのか男は下品に笑って空になったグラスに瓶を傾ける。部屋にトクトクとビールが注がれ泡立つ音が響く。お前みたいな奴こそアルコールでガス抜きをすべきなんだよ、と親父臭い台詞をのたまう。俺が左手に握ったグラスの中はただの烏龍茶。

「ガス抜き。そう言うのは好きじゃない。理性を飛ばすのは嫌いだ」
「ふうん。合コンとかで困らねえのか大学生」
「そういうものには出ないから別に良い」
「枯れてんなぁ、最近の若者は」
「親父臭い」
「まあ、そりゃオッサンだし」
「息を吹きかけるな、酒臭い」
「おー嫌がる顔かわいー」

ぐしゃぐしゃと乱暴に頭を撫でられる。好きだ。アルコールで赤く染まった顔が好きだ。嫌がらせのつもりで顔を近づけて酒臭い息を吹きかけてくるのが好きだ。右手に浮かび上がる血管が好きだ。酒を注ぐ音が好きだ。ヘラヘラしているようで一線を引いているこの男が、いつもより少し隙を見せてくれるこの空気が、好きだ。

「なあ、お前顔赤くねえか」
「……気のせいじゃないだろうか」

酒は好きじゃない。やっぱり俺は烏龍茶でいい。だって酒に呑まれて全てを見逃すなんて、口惜しいじゃないか。



13.12.29 04:56  sato91go