Short×2+Story
短編未満とかネタメモとか。



「 その悪魔が彼氏になるまで 」


即興小説トレーニング(15分)で書いたもの。多少修正済。

※お題:「地獄ブランド品」






テレテレッテテーン、どこかで聞いたことのあるようなメロディと共に黒づくめの男は現れた。というか地面から生えた。

「よおそこの、いかにも毎日詰まらないぜって陰鬱な顔したおにーちゃん。俺の商品買っていかない?」

地獄ブランド品のセールスマンと名乗った黒づくめの男は、何処に隠していたのかスーツの中からぽんぽんと小さな薬瓶やら手のひらに収まるくらいのサバイバルナイフやらを取り出して見せた。曰く、憎いアイツを一片の痕跡も無く溶かせる地獄の硫酸。曰く、振るだけで何処にいても憎いアイツの心臓を切り裂けるナイフ。他にも憎いアイツを以下略。ぽんぽんと際限なく出てくる怪しい道具群にため息をひとつ吐く。

「……別に、そう言うの要らないし」
「何でよ、おにーちゃん。うちのブランド商品はお値段もリーズナブルよ?分割払いとか言いながら際限なく魂を搾取するどっかの天使たちとは違うからね俺たち悪魔は。一括でも十分買えるだけの魂しか頂かねえよ?」
「悪魔とか、何言ってるかわかんない、頭おかしいんじゃないの」

黒づくめの男は困ったように頭を掻くと、こんなの生えてるけど見る?とスペードが伸びたような尻尾をぴこぴこと示した。

「なあおにーちゃん、信じてもらえねーのは悲しいんだわ。信じて、いや、悪魔を信じるっつーのも変な話か?」

信じてもらえないのは悲しい、か。

「それはちょっと分かる」
「お?信じてくれた?」
「私も女だって言っても信じてもらえないし。……告白した相手にも、信じてもらえなかったし」
「えっ」

まじまじと私の頭の先から爪先までを眺め、メスだったのおにーちゃん、と呆然とつぶやく悪魔。ああ、私はこんなクソ怪しい悪魔から見ても男にしか見えないのか。何て言われても男と付き合う趣味ないから。先刻の男の声が蘇る。ちくしょう。ちくしょうちくしょう。

「おにーちゃん、じゃなかった、おねーちゃんよ。そんなアンタにいい商品ある」

悪魔は思い出したように笑った。

「憎いアイツに後悔させるくらいいい女になるアイテム、そう、俺」



13.12.29 04:46  sato91go