レイン・ミーツ・サンライト
06

ずっと消えることなく、俺の胸の中に残り続けているものがある。
頭に焼き付いてしまったのか。そう考えてしまうくらいに薄れることのない、それ。
じわり、じわり。ゆったりとした速度で広がりを見せていく仄かな熱は、優しげで幼い笑顔を回想するだけで僅かながらその温度を上げていく。妙な心地、それでいて甘美な、普段の自分とは似ても似つかない、無縁とすら云えるものだ。

自分の身に起きた明らかな変化に気づけずに疑問を抱えてしまうほど、俺は鈍くも子供ではなかったがそれを否定する材料はなかなかどうして見当たらない。わかりきっていることをわからないと偽って、現実から目を背けることも不可能ではなかっただろうが、しかし、自分の気持ちを見て見ぬ振りができるほど、俺は大人には成りきれなかったということだ。
この変化をなかったことにするのは、まず不可能。
自分の中で結論を出すと幼稚な悪足掻きは早々に放棄して、恋として落ち着けたその感情を受け止める。
これは恋なのだと。己に言い聞かせるかの如く、導き出した結論を心に告げる。
認めてしまえばなんてことはない、好意の延長線に過ぎない……と強がりつつも、心事のコントロールは予想を遥かに超えて難しい。

――みょうじ。
すっかり口に馴染んだその名前。
頭の中で名を呼ぶだけで彼女にこの想いが伝わってくれるなら、いっそそうなってしまえばいいのに。思考に溢れた女々しい願いに、苦く唇を引き結ぶ。

理屈ではなく、ある日突然浮き上がる感情の名前を、噛み締めて。
もう一度、君の名を呼ぶ。

2016/07/29 書き上がり
2016/11/26 修正

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