短編

君は微笑みながらさようならを言う人


※書き掛けの積み話を3つ詰め込みました。


◆出張中幹部とお電話。
(2018/03/10)

ディスプレイに投影されるなまえの背景には見知った彼女宅の居間の風景が嵌め込まれている。

「あー、そうだ。土産は何がいい」
「土産、ですか?」
「おぉ。言ってくれりゃあ時間見つけて買って帰るが」
「そう、ですねぇ……。幹部様に使いっぱしりを頼むなんて忍びないですが……。菓子がいいです」
「菓子? となるとホワイトディシーズンだから、チョコレートとかか。近くでショコラフェス的なのがあったからそこ覗いて……」
「いえそうではなくてですね、もっと適当にお願い致します。普通のがいいんです。海外製のあの、着色料たっぷりで、食べてる時歯にくっついたりして、包み開けにくいの。パッケージの切り取り線に従ってもうまく切れなかったりするの」
「そりゃまぁ……庶民的なのをご所望で? いいんだぜ、偶のおねだりくらい」
「あんなのでも輸入品ですと高いんですよ。お腹一杯鱈腹食べてこそですのに」
「わぁったよ」





※直接的な描写こそ書いてはおりませんが、以下全てに少々背徳的な表現がございます。お気をつけを。


◆3pしないと出られない部屋。ヒロインは太宰さんの恋人設定。
(2018/03/09)


糞ったれ、あほんだら、と罵詈雑言。前略、全くもって悪趣味な異能空間に俺、太宰、なまえは囚われてしまった訳だが提示された脱出法もはいそうですかじゃあやりますとそう易々と受け入れられるものなどでは決してなく。先程から力技による脱出もとい壁の破壊を主に俺がだが試みてはいるものの、てんでだめだめ、びくともしない。
拳及び異能によるありとあらゆる手段を試し尽くし、軽く息切れを起こしている俺の後ろで、なるほど、なるほど、と汗一滴とて垂らさず涼しげに情報だけを掻っ攫って行きやがるちゃっかり者に眉を痙攣させる。
「これは、従うしかないねぇ」
糞野郎が大雑把に肩を竦める。
従う、とはつまり脱出条件を嚥下するということだ。
「いいのかよ」
「一個人の感情論で優良株を道連れ、なんてそれこそ非合理の極みでしょう」
「誰が手前に聞いてるっつった、糞鯖。なまえ、このままだとお前が辛いだけな訳だが、いいのか」
「太宰さんが仰るのでしたら私は構いませんが」
まじかよ。即答って。女にあるまじき、というか十中八九こいつの手によるものであろう同情しか湧かないなまえの貞操観念の欠落させられっぷりに絶句する。
曰く、此処は――3pしないと出られない部屋、だそうなのだ。
要するに太宰の女であるなまえを太宰の眼前で寝取る真似をしなくてはならないという。
「おい手前何言わせてんだ呆け」

「君とは間接的にでも触れたくないもの」
「そらこっちの台詞だわ」
中也さんにきっちり上下で分割。中也さんに犯される。「キスは駄目」「お、おう」太宰さんが途中から膝枕してくださるけれど、そんなにも優しいお方でもなく「なまえもお口暇そうじゃない。かまって」と。

俺はようやっと悟った。この異空間において一番哀れな人間は自分の下のなまえであると信じて疑わずにいたが、違う。こいつらのど変態プレイの餌食となっている俺が被害者なのだと。
ヒロインが変態ですよ、という落ち。





君は微笑みながらさようならを言う人
◆仕事で他の人間を相手にした恋人設定ヒロインが中也さんに抱いてとせがむ。ある程度は察していた中也さん。酷くしてくださいとお願いするも優しく扱われて「ひどいです」「なら望み通りじゃねえか」
(2018/03/08)


膝に跨り座高の高くなったなまえのブラウスを脱がしにかかる。前立てに指を引っ掛けた際、胸元の鈕が幾つか失くなっており指先は虚を弾いた。眼球を下へ移し一瞥すると元々鈕の縫い止められていたであろう箇所からは糸が飛び出ている。疑問符を握り締めながらも俺は然程気に留めず、なまえの肩からブラウスを滑らせた。夜陰越しに見たなまえの皮膚状の曇りは内出血だったのだろうか。外気に触れる背に手を滑らせるとなまえが頭を俺の方に預けて背中を寄せ、手伝う意思を見せる。下着の留め具を探り当てると片手で弾く。外した下着は早々に彼方へと捨て去った。支えを失い少々形を崩した双丘に指を沈ませれば歪に姿を変える。口付けながら舌と指で、口腔と胸の飾りを共に可愛がってやればいい反応だ。口吸いの最中に胸を弄るというのは中々良い。声帯が悲鳴を漏らせば鼓膜に近距離で触れる上に唇から振動としても伝わるお陰で自分とこいつの境界が溶けてしまったようで。膝の上で息も許されずにいるこいつの姿に口元を緩ませたくなって仕方がない。なまえの腰を抱く左手に力を込めた時、「ん゛っ!」濁った悲鳴が繋げた口腔に反響する。明らかに快楽を得た折のものではない濁音に口吸いを中断する。
「わりぃ、傷触っちまったか?」
「いえ、平気ですから」
続きを、とやけに急ぐなまえに今夜は疑問符が湧き上がるばかりだった。

仕事上他の異性を相手に床に入る事もままある。
「あの。酷くして頂いて構いません」
「そうかよ」
俺の背中にしがみついてきた震慄を帯びた手にきつく縛られた後のような痕跡を見た。
「ちゅう、やさん……! 酷くしてと、申しましたのに! こんな……酷いです……っ!」
「なら望み通りじゃねぇか」

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