短編

来世も濁世でしょうか


ぐで、と。床に落っこちて割れた卵の、そのぶちまけられた中身さながらに。へたばるなまえの肢体を呼び覚まさんと揺さぶった。
もう無理ですと口では言う。歯を喰みしめるのも放棄して、開きっぱなしの唇から弱音と唾液を溢れさせる。だがぬかるんだ秘部は絶えず蜜を滲ませて、俺を解放するそぶりなどは一向に見せなかった。

「ヒジッ、カタさ……ぜんぜんっ、やさしく、ないじゃないですか……っ」

睦言に代わり、泣言。

「言っただろ。あんなんじゃあ足んねーんだよ」
「嘘つき、嘘つき。酷い。もう無理ですってば……! ぅ、あぁ……優しかったのは最初だけかぁっ。ほんと、もう、まじで風俗でもどこでも行って来いよう」
「阿保か、初めてだっつぅ奴にんな初っ端から無理させられんだろうが。加減してやってたんだよ」
「うぅ……ん、くぅっ……わた、しは、優しい土方さんが好きでした」
「そうかよ。ともかく俺はまだ満足しちゃいねェ。オラ、俯せになって尻だしやがれ」
「〜っ! うぐ、」

ぎゃあすかと濡れた吐息の隙間に騒いでくねる背筋に俺の汗が散った。なまえの、女の躰の空洞に埋め込んだ己の芯を貫けば、愉快なほどに背骨は弓なりだ。すぐに糸が切れ、まるまりそうになるその体に腕を回してやんわりと抱く。
枕と深々とキスに暮れるなまえは、息は続いているのだろうかと浅く覗けば。ぷはぁ、と肺を働かせた。


2019/12/12

- ナノ -