短編

きっと変わらない運命線


例えば私達が付き合ったとして、メリットがデメリットに打ち勝てるのだろうか。
疑問を提示し即座にノーと結論付けた私はきっと彼の眼にはさぞ残酷に映ったことだろう。

「女の子って結構欲深いんだよ」

男の人と違って、アイドルをみんなに微笑みかけてくれるお人形としては見れない、見ていない。皆んなに平等な陽光ではない、自分だけの……嗚呼、なんと表せばいいのだろう。心からその人の幸せを願うと同時に自分だけを見て欲しい自分だけに笑いかけて欲しい自分だけの物になって欲しい、かわいい笑みの裏にどろどろとしたものを抱きしめているのが女の子。独占欲の域に収まって仕舞えば簡単な話だというのに女とは面倒臭いもので簡単には片付かない。
驚くのだって無理はない。それらを隠し通す術を抱くようになるまでの過程で身につけるのだ、女は。
……なんて、こんなこと、真緒は知らないと思うけど。笑ってどうにか欺いた。

「問題は女の子じゃないね。マスコミが一番だ。私生活引っ掻き回されて有る事無い事書かれちゃって知らない人に憶測とかされちゃって、きっと色んな人に迷惑かけるよ」

ステージにひらりきらりと舞う時のように黄色い歓声を浴びる、それとは違う意味で騒がれて、プライベートを掻き乱される。マスメディアに追い回される日々を想像するのは容易いこと。

「そんな説明されたくらいで説得されちまうような、諦められるような軽い気持ちで俺が言ってると思うのか?」
「……やっぱりわかってない」
「そんなこと、」
「あるよ。私が愛想つかす可能性考えた? きっとわがまま言う。こんなこそこそした関係やだって絶対思う。好きになったのってそんな私じゃないでしょ?」

さっぱりした性格で先見の目があってトラブルを持ち込まない私の隣が数少ない心落ち着く場所だから、だから私を好きになった。
だったら――普通の女の子みたいに一丁前に駄々をこねる私は、酷く面倒臭いでしょう。
ほら、二人で歩む未来なんて貴方が望まないものばかりだ。

表情を作るのがうまいのは衣更真緒がアイドルだから。アイドルだから、辛さも痛みも心の奥に抑え込んで誰か名前も顔も存在すらも知らない人を励まし続けなくてはいけない。
彼が何か――それが反論だったのか否定だったのかどうかは知らない――を抑えつけ、妥協したように見せかけた時点で私は彼にとっての元気付ける大多数でしか無くってしまった。


2016/12/24
BGM:「ハッピーエンド」(back number)

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