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人生は何が起こるか分からない。初めて会ったときからその事を証明し続けてきた男は、またもや俺の予想外の言動を取った。本当に何なんだよ、こいつ。


「おまっ、…俺の仕事が何だか分からずに言ってるんじゃないだろうな?!」

「もちろん。飼い猫の捜索から運び屋、場合によっては盗みなんかもしてるだろ。時々、お前の身体からは硝煙の匂いもするし」

「なら、なんでだよ!」


そう、俺にはこの申し込みをするイヴェールの意図がさっぱり理解できない。俺は偽るのがあんまり得意じゃないから、仕事の話はしてなかったけど隠しもしなかった。明日仕事だ、とか言うと一々不機嫌になったから、薄々でも感づいてるんだな、とは思っていた。
 しかも風の噂で泥棒としての名前が通ってしまった事実が、一番イヴェールと俺を不釣り合いにしてる。だけどその職業をこなす俺が一番俺らしくいられる時で、むしろ一番俺らしくなくなるのは、イヴェールの前でだけだ。だから、例えイヴェールがやめてくれと言ったとしても、辞める気なんか毛頭ない。
 しかし、いつか言われることを覚悟していた言葉が、逆の意味だったら混乱するのは当然。俺は真意を探ろうと、痛いほどに真剣な色違いの目に自分の視線をぶつけた。


「前から言おうとは思ってたんだ。…まあ、後回しにしてたから、お前の勘違いも暴走したんだろうけど」

「は?え、前、から…?」

「…少し、僕の家の事情があってね」


イヴェールは物憂げな表情に変えて、どこから話そうか、と困ったように呟く。


「僕の家には代々伝わる宝石があるんだ。紅くて大きめの金剛石。それが僕の生まれる前に、何者かに持ち去られて売り飛ばされたらしい。両親は笑ってその事を話したよ、強盗に入られて命が助かっただけでも幸運だったって。でも、今は事情が違う」


夕陽が射しこんで、影を覆った俺たちを照らす。俺は久しぶりに、目の裏に焼き付けるくらいイヴェールを見ている。ただの女としてではなく、果たしてこの男の言い訳が、裏の世界へ俺に引きずりこませるだけの価値があるかどうかを見極めるため。


「あの宝石は、野放しにしてはいけないもの。噂で知ってるだろ?ホープダイア。あれ以上に危険なんだ」

「盗まれたなら、警察とか正規の方法で探せば良いだろ」

「それがそうにもいかなくてね。大っぴらに戻ってきた!とか世間に伝わると、また別の誰かに強盗される。だから、返してもらうならこそこそやらないと。だから、経験豊富なローランサンの力を借りたい」


それに、とイヴェールは薄ら笑った。相当の場数を踏んでる俺も、思わず背筋が冷やりとする。


「目には目を、盗まれたら盗みかえせって言わない?」


つまり、どうしても取り戻したいものがあって、それには手段を選ばないということを言いたいのだろうか。俺はそれをイヴェールに問うと、大体そんな感じ、という答えになって帰ってきた。


「無駄に知識はあるから、サンの苦手そうな頭脳戦とかでも役に立つよ?銃も撃てるくらいの筋力もある」

「…人を殺すこともあるかもしれないぞ」

「構わない」


イヴェールは、俺の反論を封じ込めるようにきっぱり言い放つ。その覚悟が半端なようでは、俺も一笑して首を横に振るくらいできただろう。だけど、イヴェールから漂う俺でもよく分からない執念みたいな冷気に俺はとうとう、考えさせてくれと答えてしまった。
 微妙な沈黙が辺りを騒ぎ立て始める。俺は座り込んでしまいそうな疲労感が一気に頭から圧し掛かってくるような錯覚を覚えて、頭を目の前の身体に預けた。まだ頭は混乱してる。今日は色んな事が短時間に起こって、思考力とか集中力がつまってる頭の中身は、容量不足で爆発しそう。整理するためにつらつら思いだしてると、冷や水を上からかけられた感覚が俺を襲った。





Q:この設定はニョタ関係あるんかい
A:ぶっちゃけないですごめんなさい!

しかもお題のとーぞく結成ネタはぼんやり考えてるけど、これとは別の話ですorz
にょた設定のみ↑を適応ということで。
そしてホープダイアを筆頭に、時代ごちゃまぜでまたもやごめんなさい…!







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