合縁奇縁の行く末は




陰間パロ。ほのぼの?









「お前の手、白いよな」

「そうか?」



暇が前提のお昼時、天気は快晴、日当たりの良い縁側、とくれば、昼寝をするのが一番良い。
しかし今この時暇な僕と暇なローランサンは、いぐさの香りに包まれて大の字になることもなく、二人で他愛もない会話を交していた。


「白いって。…俺の方が日焼けしてるし、ごついし」


ローランサンは縁側から足を出してぶらぶらさせる。指名が夜からあるらしく、着ている上等な着物の裾が肌蹴るのも構わずに、ぶらぶら。僕の手よりも白い足首に、ついつい目が惹かれてしまう。これは計算してやっているのだろうか。いや、こいつに限ってそれはない。


「そんなに白いか?」

「白いし細い。でもイヴェールのが大きいんだよな…。ほら、」


ローランサンは勝手に僕の片手を拝借し、自分のと比べて悔しげな顔をした。

身長もそうで、わりと似た体格であっても、僅かにローランサンの方が下回ることが多い。これ以上大きく成長したって、この世界では良いことがあまり無いことを分かってるのか否か。ローランサンはどちらの体格が勝っているかという話題になると、最後には必ずと言っていいほど「いつか絶対追い抜かしてやる」と、意気込んで終わる。それを僕が鼻で笑うのはいつものことだ。


「白いのは、最近外に出てないから。日焼けしようがないんだよ」

「…よくこんな場所に篭ってられるな。俺は無理」

「ローランサンは外に出すぎ。もっと大人しくしてれば?」

「絶対いやだ」


僕はここ数年、自由に一人で街を出歩くことはなかった。
反対に、ローランサンは少しでも暇があれば、上からの処罰を恐れずに外へ脱出する。それがこいつの問題児と言われる所以。最も、ローランサンが問題児でいられるのは、客の人気それなりにを得ているからだけど。

不意に何か思いついたように顔を上げたローランサンにつられて、僕も顔を上げる。ローランサンは、子どもみたく目を輝かせて提案した。


「イヴェールなら外出許可出そうじゃん。今度くずきりでも食いに行かねぇ?」


美味しい所、この前見つけたんだ。と笑う。正直誘いは非常に心惹かれるが、僕は首を横に振る。


「行かない。でもくずきりは買ってこい」

「……」

「あと、みたらしとあんみつと饅頭とようかん」

「…甘いの好きだよなぁ、お前」

「悪いか?」

「いや、いつもあんだけ食べて、太らないのが不思議なだけ」


そう言ってひねった首と共に、灰色に近い銀色が日に当たって鈍く煌めいた。僕は、そういう体質だ、と弁明するついでにその頭を撫でる。つやのある固い感触を楽しもうとすると、くすぐったかったのかすぐによけられてしまった。仕草が猫みたいだ。

熱を吸収してぬくい木目の板と、緩やかな午後の風が眠気を誘う。ふと、何故かローランサンが初めてこの店に来た時のことを思い出した。

本当なら、僕とローランサンは話す機会も会う機会もなかっただろう。
しかし縁とは本当に奇妙なもので。暴れん坊な新人に手を焼いた店の人間が、この世界に長い僕へ世話を頼みこんできた時に、薄かった僕たちの縁は繋がった。その時から、こいつの藍色の目はずっと変わらない。


「イヴェール?」

「ほんとお前って、昔から相変わらずだよ」

「またその話か。同じ話を繰り返すのは老化現象のひとつじゃね?」

「ああ、早く爺さんになって隠居するのも悪くない。問題は此処を出てからの仕事か。どうしよう」

「……イヴェールの爺さん姿が思いつかねぇ」

「そうか?ローランサンは、いくら年食ってもローランサンのままなんだろうけど」

「それは暗に、俺がガキのままだって言ってるだろ」

「そうとも言う」


飛んでくる拳を避けて、くすくす笑った。そのまま行き場をなくした腕を捕まえて引き寄せると、暴れる暴れる。爪が引っ掛かって顔に傷がついたらどうしてくれるつもりだ、こいつ。
あまりにも暴れるものだから、止めに、耳元へ息を吹きこんでやると、肩を大げさにびくつかせた暴れ猫は一瞬で大人しくなった。僕だけが唯一知ってる、弱点。顔を真っ赤にしてわなわな震えているのが妙に可愛くて、目元に口付けてみた。

息を吹き込んで真っ赤になるのは、条件反射。僕がこの手で何も知らなかったローランサンに、花とは何たるかを教え込んできた証。


「…っ!くずきり買ってこないぞ!!」

「それは嫌」

「なら退けって!今すぐ!」

「…ん、もう少しだけ」


いくら夢の世界の、夢にそぐわぬ汚い所を教えたって、根本的な所で変わらないローランサンに一番惑わされてるのは僕だ。これまで僕が辿ってきた道の中で落としたものを思い起こすと、羨ましい半面、その矜持にも似たものをぐちゃぐちゃに壊してやりたくなる衝動がある。

それでもこうやってローランサンと戯れるのは。変わってしまった僕には毒みたいに眩しい蜜を、僕自身が焦がれてやまないからなのかもしれない。

てこでも動かない僕に、着物がしわになる。とか部屋の準備しないと。とか今更言いながら、結局は諦めて好きにさせてくれるローランサンに、今だけは感謝した。








…意味不明orz

何か…盗賊だと、私的イメージが、裏世界の先輩はローランサンの方。だから逆でもいいかなー、とイヴェールをこのポジションに設定したけど……今回もやっぱりぎゃふんで終わりました(^J^)/  そして、裏には転ばない方向で頑張ってみたり。だってこれ以上裏にすると長くなる上に絶対にアーッ\(^o^)/!←


そしてそして、リクエストおまたせしました!こ、こんなものでよろしかったでしょうか…?
またまた不完全燃焼でしたが、楽しんでもらえれば幸いです。それでは二度目ですが、リクありがとうございました……!


※5千ヒットお礼文でした。






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