白+ルキ・現パロ







シャキン、シャキンと鉄の擦れ合う軽快な音が耳元を擽る。鋏を一通りめぐらせたルキアが満足げに「よし!」と呟いたのを聞いて、ゆっくり瞼を上げた。


「どう、すっきりした?」

「大分軽くなったよ。ありがとう、ルキア」


鏡越しにどういたしましてとはにかむ薄青に、自然と緩む顔を意識して引き締めた。

肩にかけたケープを外し床に敷いた新聞紙を片付ければ、休日臨時床屋は本日の営業を終える。店長の少女は客の僕の頭をぐるっと見回し、自分の鋏さばきの成果を確認した。時々、細い指先が少し短くなった髪の毛を梳いていく。
さらり。さらり。細くて暖かい人差し指は、いつの間に、僕の心拍数を上げるものに変わってしまったんだろうか。

「いつの間に、なんだろう」

「え?」

「うん。いつの間にだろうね、ルキアがこんなに髪の毛切るの上手くなったの」

「……さ、最初に切った時失敗したの、実は根に持ってる?」

「…あの時は見事に一直線で切れたよね…。次の日学校でさんざんからかわれたっけ」


まあ、切ってもらえた時の喜びに比べれば、指差して笑われることなんて何のそのだけど。偶にはルキアの慌てた顔を、僕が見ても罰は当たらないはず。だって、無邪気なこの幼なじみに翻弄されてばかりじゃいられない。

でも、どうしようって下がった肩を、鏡越しでなく体を捻って正面から見てしまうと。結局緩んでしまった口元が、勝手に言葉を紡ぎだす。


「ほら、失敗は成功のもとだって言うし。あの髪型、結構気に入ってたから」

「……本当?」

「本当。だから、これからも切ってくれる?」


それはもちろんと言わんばかりに、縦へ大きく振られた頭を、出来ることなら一切の下心なく撫で回したかった。今は些細な未来の予約を取れただけで十分だと言い聞かせて、僕はさっき別の指が触ったばかりの髪を静かにつまんだ。








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