タイトルそのまんま。
小さいルキアと白鴉です。










「はくあ、おねがい!」



今日も元気に飛びついてきた少女を、最近漸くよろけずに受け止められるようになった。女の子の成長は早いもので、この前は僕のおへそ辺りまでしかなかった頭が胸辺りまで届きそう。僕が身長低いってこともあるけど、そろそろ身長が追い付かれそうだ。どんなに望んでも僕の成長期はまだ来なくて、こそこそ毎朝身長を測ってる姿なんてこの子には見せられない。ルキアはもちろん身長差なんて気にもしない顔で、無邪気なものだ。

「うた、おしえてっ」

「歌?」

首をかしげると、抱きついたままうなずく。くすぐったかった。


「とりも、きれーなこえでうたう。ボクも、うたえるんだって!」

「歌いたい?」

「うんっ!」


多分、教団の中の誰かに聞いたのだろう。期待を体中いっぱいにのせて、ルキアは僕を見上げていた。断るつもりは当然ない。この時にはもう、先程ノアから言いつけられていた用事など頭から消え去っていた。僕は小さなお姫様の願いを叶えるべく、自分が知る限りの旋律を思い浮かべる。思い出すのは、兄さんがイリアや僕に歌ってくれた、子守唄ばかり。そうだ、それがいい。




「じゃあ僕が歌うから、覚えようね?」

「やったぁ!!」



飛びあがって落ちそうな細い体を慌てて抱きしめて、そのまま僕は近くにあったベンチに座った。ルキアはもぞもぞと座りやすい位置に移動しながら、わくわくとした表情でじぃっと僕の口を凝視する。照れくさくなったけど、ここは我慢。僕は覚悟を決めて最初のフレーズを歌いだした。



「…―――、…」


僕の頭の中では、歌声は一人じゃない。寄り添い合う大切な人との豪華なハーモニー。大切な記憶は、失われずに僕の中にあって、ルキアへと受け継がれていく。この温かい気持ちが彼女に伝わりますように。
丁寧に最後の一言を紡ぎ終えると、ルキアはぽかーんとしていた。……自覚は無かったけど、僕は相当音痴だったのだろうか。



「ルキア?」

「…っい、」

「え?」

「すごいっ…、はくあうたじょうず!!きれーい…」



びっくりした。きゃあ、と叫びをあげて小さい体が突進してきたので、二重にびっくりした。今度は支えきれずに倒れてしまう。ふがいない。けどそれすら楽しそうにルキアは笑っていた。


「ボクも、はくあみたくうたえるかなぁ…」

「ルキアは絶対、僕より上手くなるよ。だから一緒に練習しようね?」

「……はくあまたうたってくれる?」


上目遣いに言われたら、だめ、と答えられる人はいるだろうか。いや僕の中には元から、ルキアの頼みごとに対する返事の選択式に、×はない。


「何度でもルキアが好きな時に歌ってあげるよ」


だから、今度は一緒に歌おうね。













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