ほのぼの…?





ローランサンは、馬鹿だ。しかしただの馬鹿ではない。料理だとかの家事は一通りできるし、剣を持てばそうそう負けることがない。それに、意外にも芸術関係の才能を持っている。僕等が初めてあった時も、彼は絵を描いては観光客からコインをもらっていた。



「…また何か描いてるんだな」

「おはよ、イヴェール。たまには良いだろ」



朝 目が覚めると、陽光がよく当たる窓辺でローランサンがキャンパスを広げていた。あまり大きくない画用紙に、使い込まれた筆と絵の具で色を灯す。後ろに回りこんで覗くと、白さが目立つ空間には人物の輪郭らしきものがぼんやり浮かんでいた。


「あ、飯はいつもの所に置いてあるから」

「後で食べる」

「ん。忘れるなよ?」



絵を描くローランサンはいつも上機嫌。楽しそうに真剣に、白を色とりどりに変えていく様子を見るのは好きだ。朝日に包まれて棘を抜いた寒風が、ふわりと彼の髪を撫でる。僕が絵を描けるのだったら、今この景色を白い紙に描くのだろう。


「それは誰なんだ?」

紙の中の人物は、ローランサンが筆をつけていく度に特徴付けられていく。一筆、一筆やけに丁寧なことから、その人物は多分美人だ。気になって尋ねると、ローランサンは頬を赤くした。


「誰、とか決めてなかったんだけど…モデルはいる」

「誰がモデル?」

「……内緒」


この時僕はふーん、と呟いただけでそれ以上追求できなかった。何故か焦り始めたローランサンに、この部屋から追い出されたからだ。



僕がその絵の完成品を見たのは、結局一週間後。彼が用事で出かけているときに、偶然荷物に紛れ込んでいるのを発見したのだ。丸まっていたのを開いて、息をのむ。白を背負って此方を向く人物には、嫌というほど見覚えがあった。

「……っ、」

色違いの瞳を持った人は、ローランサンが何を思って描いたのかを語ってくれない。ただ静かに微笑んでいるだけだった。



そう。何気無くこんなことをするから、彼から馬鹿のレッテルがはがせない。





ロラサンの趣味は絵を描くこと。ぼんやりと描いてたらいつの間にかイヴェールになったに違いない\(^^)/










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