明るい時間(クロセカ)


小さい白鴉とルキア



「はくあっ!!」

たったった、と廊下を走る軽やかなリズムに聞き覚えがあると思ったら、そのリズムの勢いで後ろから飛び付かれた。そういえば兄さんがまだ生きてた頃、同じようにイリアに抱きつかれて笑っていたっけ。懐かしくなったけど、がっしりと受け止めていた兄さんの腕を思い出すと、今の衝撃でよろけてしまった自分が情けなくなってしまった。僕はこの手で君を守りたいのに、自分の体はまだこんなに小さくて頼りない。

「ルキア?」

足を踏ん張ってせめても転ばないようにしてると、飛びついてきた犯人はすぐさま床に着地して僕の正面にまわる。そしてまた飛びついてきた。
よし、今度はちゃんと受け止められた。



「どうしたの?そんなに急いで」

「だって、はくあ、ひさしぶりなんだもん!」

「久しぶりって、昨日あったよね…?」

「おひさましずんでのぼったら、つぎにあうひとはひさしぶり」


ルキアはとても楽しそうに笑い声をあげて言う。僕も、そうだねと笑った。ああ、耳の奥に、懐かしい声が灯る。




『廻り行く明日と昨日、昇って落ちる太陽と月。出会いと別れ、これはいつ起きるか分からない。本来ならね。だから、僕たち死んでゆくべき者は
この二つを大切にしなきゃいけないんだよ。だからおはよう、とかさようなら、とか久しぶり、とかの言葉があるんだ』




「そうだね。ルキア、昨日ぶりだね」

「きのうぶ、…?」

「今日もまたあえて嬉しいってことだよ。昨日ぶり」

「ぼくも!はくあにまたあえてうれしいっ」



きのうぶ!とはしゃいで繰り返すルキアの体を抱きしめ返しながら、僕は一粒だけ流した涙を見られないように努力することになる。






ルキアはおぼえてなくても、知らなくても、身体と心中にあの二人を宿している。もう二度と会えない人たちはまだそこにいて、いつまでも僕たちを見守ってくれているような気がした。









白鴉は10歳設定。これでも10歳なんだ。ルキアは五歳。










「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -