*ルキウスとイリアと白鴉の話。捏造具合がひどいです。
白鴉はルキウスの血のつながらない弟だったらなぁという。
因みに白鴉≠ルキアです。ルキアが生まれる数年前の話。
それでもよければ、どうぞ。





昼のぽかぽかしている時間帯は、昼寝をしたくなるものだ。抱き上げている幼子もすやすやと気持よさそうに眠っている。さぁ、寝る子を起こす前に早く彼女に会わなければ。

「あ、ルキウス!」

歩きなれた道を歩いていると、探していた本人がぱたぱたと走ってくる。きらきらとこぼれる木漏れ日が、彼女の白い肌と長い髪に反射して綺麗だった。

「やぁイリア。今日も可愛いね」

思ったまま口にすると、イリアは素直に頬をゆるめて照れ臭そうに笑う。やっぱり可愛い。しばらく二人で笑いあっていると、彼女は僕の腕に抱かれた存在に気付いたらしい。

「…あれ、どうしたのその子?」

首を傾げて、眠っている子供の頬をぷにぷにつつく。

「僕の弟だよ」
「弟いたっけ?」
「今日から僕の弟になったんだよ。髪の色も目の色も、僕とお揃いなんだ」
「本当!ルキウスにそっくり」

楽しそうに色んな所をつついている彼女に、僕は暖かな気持ちになった。彼女は、外の世界をあまり知らない。聞いた話によると生まれた時から、このどうも胡散臭い教団の中で、唯一預言書を読む事が出来る者として過ごしているらしい。まるで檻の中にいれられた小鳥みたいに。当然、小さい子供と接したことはないのだろう。
いじられてもちょっとむずがるだけで、泣き出さない幼子を誉めてやりたい。流石は僕の弟だ。

「ふふ。それにね、この子には白い翼があるんだ」

そう。この子には、その背中に大きな希望と可能性を背負っている。白い翼は、いつかこの世界から輪廻の道を辿って羽ばたいていくための大切な道しるべ。僕は誇らしい気持ちで、幼子の背中を撫でた。彼女は少しだけきょとんとして、子供の背中がわを除いてにっこり笑った。

「翼…、とても素敵だね。そうだ、名前は?」

いじくっていた指を撫でる形に変えて、イリアは尋ねる。その質問は僕が彼女を探していた理由でもあるので、少しだけ言葉を重くして、僕は提案した。

「良ければ、君に決めて貰いたいんだ。うんと良い名前を考えてくれないかい?」
「わぁ!じゃあボクが名付け親だねっ。……そうだなぁ、白い翼、ルキウスにそっくり…うーん」

名付け親。じゃあ名付け子の兄である僕は、彼女の息子になるのだろうか。なんとなくもやもやしたものを感じたけれど、彼女との関係に名前を付けるのも悪くない。考え込んでいるつむじを見て、僕はぼんやりとそう思った。そのまま待っていると、数分後、彼女は勢いよく顔をあげた。

「白鴉、白い鴉で、はくあ。どう?」

もう一度彼女がはくあ、と呟く。すると、今まで眠っていた幼子の瞼がぴくりと開いて、空の色を映した色がのぞいた。君もその名前がいいのかい?

「白鴉…。うん、ぴったりだ。ありがとう!イリア」
「えへへ、どういたしまして!よろしくね、白鴉」

イリアがそう言って笑いかけると、白鴉のまだ小さな手が伸びて、ぎゅっと彼女の指を握り締めた。まるで白鴉もこちらこそよろしく、と挨拶しているみたいだ。僕も笑って、幼子ごと細いからだを抱きこむ。


空は輝いて眩しい。いつかこの大切な宝物達を置いてそこへ旅立つのだとしても、今はまだ、胸にある温もりを感じていたかった。ただ、流れてゆく時間がどうしようもなく愛しい。










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