*かなり俺得パロ
*SFもどき
*地雷ばっかりなので
*何でも笑って許せる方向けです










宙に散らばる鉄くずを避けながら、ローランサンは手探りでその“船”の中へ進んだ。もう何十年も前に捨てられただろう“船”は所々穴があき、その向こうに黒い空と何十光年先にある星だの人工惑星だのが浮かんでいる。――皮膚と空間を隔てている防護服が無償に重たく感じた。だだっ広いこの世界に一人でいるというのに。

ローランサンが近くに泊めた“船”から一本伸びているロープが、唯一の命綱だ。世の中には背中に噴射孔を取りつけて、自由自在に移動できる優れ物だってあるけれど、ローランサンにそんな高価な物を購入してる余裕はない。

(でもあれ欲しいよな。この前拾ったやつ売らなきゃ良かった)

二足歩行する動物が、青い屋根から飛び出して数百年以上経っている。研究の為に使った資材や、研究期間が終わってそのまま放棄された衛星、“船”等から使えそうな資材や物品を漁って売り飛ばす生活をしている者はざらじゃない。かくいうローランサンもその内の一人で、偶に趣味の範囲で宙賊まがいのこともしたりしながらも、それなりに楽しく生活をしていた。

同じ所を通ってロープが絡まらないようにしながら、ローランサンは無人の船内を歩きまわる。やがて操舵室だった所につくと、取りあえず手近にあったコンソールを引っぺがす作業に取り掛かった。工具を二三個取り出して、慎重に解体していく。

朧に残った外観や内部の様式から、この“船”は結構古いものだと分かった。こういった仕事場は、古ければ古いほど解体作業が楽になる。劣化して脆くなったこともあるが、過去の技術は今ほど溶接が素晴らしくないのだ。

使えるものとそうでないものに分別し、売れそうなものだけ懐に収めていると、ローランサンは今まで見えていなかった部分に一つスイッチがあることに気がついた。おかしい。ローランサンは首を傾げた。そのスイッチは一つ上のカバーを外した所にある。設計上のミスとしても、こんな有り得ないミスをするような技術士なら、後世まで名を残している筈だ。悪い意味で。

頭の片隅と状況が「これは怪しいぞ」としきりに警鐘を掻きならしている。しかしローランサンはそこで好奇心を発揮する人物だった。どうせ過去の産物だ、動く筈がない。そんな軽い気持ちでしばし目の前を見つめた後、謎しか語らない突起を人差し指で突いた。

(……やっぱり何もないか)

周囲は何の音沙汰もなく、予想はしていてもローランサンは僅かに落胆した。何か、とても楽しいことが起こる予感がしたのだけれど――。

作業に戻ろうとしたローランサンを欺いて、突如鈍い稼働音が操舵室内に響き渡った。

(え、)

呆然としている間に鈍かった音が徐々に鮮明になり、大きく近づいて来ている。それは、下から何かが動き出しているようだった。ローランサンの頭に走馬灯よろしく、古い友人から聞いた話が横切った。

古い時代は“船”がとても高価なもので、当時今より更に活動が活発だった宙賊のかっこうの餌食だった。特に政府のお偉いさんが乗る“船”に関しては軍事機密なども運ばれていたので、襲われた時の為に高精度な脱出機能と、何でも自爆装置が付いていたとかいないとか。

ローランサンは一気に体温が下がったのを自覚した。

爆発に巻き込まれたら身体が木端微塵だ。何とか助かったとしても、命綱のロープが切れれば爆発の衝撃を受けた身体は果てしない漆黒の空間に投げ飛ばされて、止まることなく死ぬまで彷徨い続けることになる。そんなのごめんだ。

収穫物の入った袋を慌てて纏めて、ローランサンは操舵室を後にした。



しかしローランサンの予想はむなしく、無理矢理入口をこじ開けたメインデッキを通り抜ける頃には、不吉な音は沈黙していた。肩すかしにあった気分になりながら、もう道具もすっかり片づけてしまったので、どうしようか迷っていると、ローランサンの目に行きは目に着かなかった扉が飛び込んでくる。

(こんな扉、さっき来た時あったか……?)

疑問に思いはしたものの、ここですごすご帰るには、この手つかずの“船”は大きな獲物だった。

逡巡したのはほんの短い間で、ローランサンはその扉に手を掛ける。鍵が掛かっているかと思い力を込めて横に引くと、思い感触はあったけれど案外簡単に入口は開かれた。その瞬間、身体が見えない手で内部に引っ張られる。ローランサンは軽く目を見開いた。

(空気が、ある)

新たに開けた空間に身体を踊りだすと、そんなに広くないのか、すぐ行き止まりに辿りつく。室内はがらんとしていて、これといった機材も制御装置もないようだ。ただ、目を凝らしてみれば、奥にもう一つ扉があることが分かった。そしてローランサンは、既に人が居なくなって久しいこの空間に、少しだけ風が流れていることに気がついていた。どうやらその扉の向こうに、長い間壊れることなく動き続けている、空気を作りだす装置が設置されているようだった。でも、何の、誰のために?

持ち前の好奇心は、例の古い友人によく注意されたものだ。「好奇心は猫をも殺す」という古い言葉があるのを、付き合いの長さだけ滾々と説教されてきた。

その友人もこの場に居ないとあっては、今のローランサンを本人でさえも止められない。先の稼働音が気になったが、ローランサンは胸を高鳴らせさえしながら部屋の奥へと歩を進めた。
















「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -