4.人は人、自分は自分<後>




またパーンがでてきます。冬+サン+パーン。







ごつっ、と音がしたので隣を見ると、さっきから愚痴と惚気を交互に喚いていたローランサンが、カウンターに沈没したところだった。

「はぁ、手がかかる…」

そうは思いませんか。


振り返って、ずっと僕らの話を聞いていただろう幼馴染の同居人に問いかける。そして、ぐうすかと夢の国に旅立っている幼馴染から、まだ少し安酒が残るコップを没収して、改めて彼をまじまじと見た。癖のある美しい銀髪、珍しいオッドアイ、軽く膨らんだ唇、すらっと伸びた身体。それらのパーツが絶妙な間隔で配置されている。少なくとも彼の容姿についての噂は間違っていないようだ。だけど僕は、隣にいる奴からさんざん彼についての話を聞いていたあとだったので、性格までも噂通りとは思えなくなっていた。

うしろのテーブル席に一人で座っていた彼は、ものすごく微妙な顔をして僕のもうひとつの隣席に腰掛けてきた。幸か不幸か、彼がこの酒場に来たのは、幼馴染が片想いがどうのと叫んだあとだ。そこを聞いていたら微妙な顔どころではないだろう。


「気付いていたんですね」

「あなたは目立ちますから。こいつは気付いていなかったようですが」

「馬鹿ですから。……貴方は、ときどき顔を合わせますね。改めて、イヴェール=ローランです」

「僕はパーン。知っていると思いますが、ローランサンの同郷の幼馴染です」


奇妙な自己紹介が終わると、僕たち二人の間(+沈没者)には沈黙が訪れた。それもそうだ。初対面なのだし、相手は稀に見る美人だ。緊張しないわけがない。次の話題は何かないかと探していると、ふいにくぐもった声した。



「ぱーん、いヴぇー、るどこぉ……」



僕は思わず噴き出して、彼はさらに微妙な顔をする。意識無くして話題を提供してくれた幼馴染に感謝して、僕は彼を促した。



「そろそろ、このお荷物を持ち帰っていただけますか?僕では手に負えないようなので」

「…そうします。今日は迷惑かけてすいませんでした」

「いえ。それなりに楽しませてもらいましたから」

ことり、と彼は持っていたコップと小銭を置いて、おい帰るぞと幼馴染の肩をゆする。相変わらず幼馴染は夢の中で、むにゃむにゃと嬉しそうに肩に置かれた手にすり寄っている。その時、彼が瞳にちらつかせた色を見て、僕ははっとする。もう一度確かめようとしたけれど、それは一瞬で消えてしまった。結局彼は起こすのを諦めたようで、幼馴染の腰に腕を差し込んで抱き上げた。結構力あるんだ。



「また、機会があったら一緒に飲みましょう」

「喜んで」

「、あの…」

「?」

「もうちょっと、貴方がローランサンに思っている事を本人に言ったらどうですか?」


あの一瞬過ぎ去って行った色。その色は、とてもあたたかい、下手するとあつい、とも言えるような色で。僕は気がつけばそんな事を彼に提案した。彼は口の端をあげて小さく笑う。




「僕は僕なりの愛情表現でしか、こいつに接することができないので」







そういって彼は寒風の吹きすさぶ中、よろよろと酒場を後にした。





つまり、やっぱり、もしかしなくとも両想いなんだな。
こんど他の幼馴染、とくに心配してるシエルにどう説明してやろうかと思い悩むのは、この出来事の数時間後。
















何か、お題、あんまり生かしきれなかったです(-_-;)。






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