2.いじわるのうらっかわ 




イヴェールがとってもツンデレな話。





久しぶりに熱が出た。といっても一日で下がって、今はぴんぴんしてるけど。

「馬鹿は風邪ひかない、ってのは迷信だった」

熱がうつる(この相方は体調を崩しやすい)と嫌だから、と薬を置いて俺の居る部屋から一日避難していたイヴェールが、眉を寄せて言った。

「…俺が馬鹿じゃなかったんじゃね?」

一日ぶりとはいえ、喉の調子はまだ良くない。痛いし声はかすれてる。頑張って返事をしたのに、イヴェールは睫と同じ色の眉をちょっと寄せて、ありえない。と間髪いれず即答した。ひでぇ。

「今日が仕事なかったからよかったものの…。また風邪なんか拾ってきたら、今度は薬もなしで放置だからな」

「うん。…まー、ありがと…」

「?…あぁ、薬代は働いて返せ」

「、りょーかい」

くるりと銀色の尻尾を向けて部屋をでてく背中に、ありがとう、のやじるしの先をはっきり言ったらどうなるんだろう。

本当は、俺、知ってるんだ。

昨日俺が目を閉じたあと(多分寝たとおもったんだろうな)、慌てた様子で部屋に戻ってきて、タオルを交換したり汗を拭いたり、手を握ってくれてたりしてくれたこと。寝た振りは結構大変だったけど、それ以上に嬉しかったんだ。

「ありがと、イヴェール」

今頃朝食を慣れない手でつくっているだろう相方に、せめてもう一回感謝の言葉を。



どんなに冷たくされても邪険にされても、離れられないのは。素直じゃない相方のいじわるのうらっかわを知ってるせいだ。


(意地っ張り・10題)






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