俺と僕とそれから | ナノ


03


それから少しして、俺は朋樹と再会した。俺が朋樹を見下ろしてて、朋樹は目を固く閉ざしていて俺を見ていない。


朋樹とは、意識不明の状態で再会したんだ。

「…おい。」

「………………。」

「……おい。」

「……………。」

何度も声をかけたが、反応がない。一命を取り留めているから目を覚ましてもいいと言うのに、聞こえるのは幼馴染の命の生命線と言える人工呼吸器の無骨な機械音。それからモニターから聞こえてくる規則正しい耳障りな高い音。

「……友哉君。…なんで、うちの子がこんな目に遇わなければならなかったのかしら?」

友哉の隣には朋樹の母親が泣きはらした顔で居る。しかし友哉を見る目は恨みの籠っている物。うちのあんなに真面目な子が、優秀な子が、イジメになんて遇って、自殺未遂だなんてことをしなければならなかったの?と。うちの子がこんな目に遇う前に、友哉の様な社会不適合者が、こんな目に遇えばよかったんだ、と。

「………。」

「遺書が残してあったわ。学校側、何も対処してくれなかったそうじゃない。私はこれから学校を訴えます。」

「…そう、ですか。」

「勿論私は友哉君の事も憎んでます。同じ学校だったのに助けてくれなかったのよね。…全部書いてあったわよ。主犯の子の名前も、学校がどんな対処をしたかも…伝統のある学校?ちゃんちゃら可笑しいわ。」

「……。」

友哉が反応もせず俯いていると、朋樹の母親が言葉を続けた。

「…私は恨んでいるけど、…この子は友哉君に救われたって、書いていたわ。」

「……え?」

その言葉は友哉を正気に戻すには十分だった。友哉はパッと顔を上げる。

「そういう事だけど、私はあなたを恨みます。…二度と私の前に姿を現さないで頂戴。」

「……。」

友哉はこれ以上この病室に居づらくなってしまったので、病室を後にした。
家に帰ると郵便ポストから郵便物が溢れかえっていた。郵便物をポストから取り出して家の中へ。
電気、水道代請求書。
母さん宛て、父さん宛て、…この二人宛ての手紙は職場に送った方が確実に読まれるんだけどな。と、俺宛て……俺宛て?
生まれて初めて封筒に入った手紙をもらったかもしれない。差出人は誰だ?と思って差出人の名前を探す。

しかし、名前は見当たらない。

とりあえず中身を出してみる。そこには規則正しい文字、見たことのある文字が並んであった。

「ん?、…初めて友哉に手紙を書きます。初めて書く手紙がこんなのでごめんね?学校にもぉおおおおお!?」

声に出して読んでみたらその文章は朋樹の書いたものではないか。消印を見てみると自殺未遂を起こす数日前の日付。友哉は震える手つきで手紙をしっかりと持ち、中身をさらに読み進んでいく。

『友哉、初めて手紙を書きます。初めて書く手紙がこんなのでごめんね?学校にも、両親にも言わなかったこと…友哉だから話すよ。
辛かった。辛かったんだ、でも僕ね。虐められるのはこれが初めてじゃなかったんだ。実は小学校の頃にもあった。友哉にはバレてないと思う。バレてたら今の僕は恥ずかしいな。バレてない前提で話させてもらうよ。小学校の虐めの原因は友哉に引っ付いてたからなんだ。どこに行くのも、何をするのも一緒の僕が他のクラスメイトは気に食わなかったらしい。友哉はカッコよくて誰からの憧れの存在だった。そして僕は根暗で君とは雲泥の差があった。だから虐められた。嫉妬だったんだ。その時、小学校の頃に虐められていた原因は。だから僕は少しずつ、少しずつ君から距離をとった。君は僕が居なくても大丈夫な人だったからね。僕の計画はスムーズにいったよ。また平穏が僕に訪れた。友哉と気軽に話すことが出来なくなるっていうことが少し寂しかったけどね。
それで、今回虐められた原因は…分からない。考えてみたけど…分からなかった。僕が根暗だとか、ブサイクだからとか、そういった漠然とした理由はお遊び程度に脳裏によぎったけど、決定的な理由はわからなかった。きっと暇つぶしだったんだろうね。虐める対象がたまたま僕だったんだろうね。誰でも良かったんだと思う。虐めの主犯が友哉の友達ってことは想像がついた。人を虐めるなんてことをするのは大抵、そういった人種だからね。いくら君が統括していても、防ぎきれないものはあるよ。そして君は責任感からか僕に迫ってきたよね。僕…嬉しかったんだよ?長い間一緒に遊ぶとかしていなかった間柄の僕を君は気にかけてくれた。本当に嬉しかった。けど僕は君を突っぱねてた。理由を言うね。僕は、僕が原因で君が人を殴るとこを見たくなかった。僕のせいで人が傷つくのを見たくなかった。君は考えるより先に手が出るからね。安易に想像がついたよ。僕は君の手を借りなくても過去の様にまたこの現状は回復すると思ってた。けど、さすが中学生だね。なかなか終わらなかった。僕にも友達って言える同級生は居たんだけど、僕が虐められ始めてだんだんと距離を置くようになったんだ。仕方ないよね。虐めに巻き込まれたくなんてないよね。だから僕は仲間が僕を無視しようと、耐えることが出来た。いつかまた一緒に過ごせるようになるって信じて。
でも、耐えられなくなっちゃった。友達が僕の大切な、君とお揃いで買ったとても大切なキーホルダーを目の前で踏んで壊してくれた。僕は頭の中が真っ白になった。何が起こったのか分からなかった。けど目の前には壊れたキーホルダーがある。茫然としている僕に僕の仲間はこう言った「お前なんて仲間なんかじゃない、さっさと死ね。」って。僕はもう何も考えたくなくなったから…この時初めて死にたくなったから、僕は死ぬことにしました。
最期に僕は友哉と過ごせた時間が大好きだった。僕のこと忘れないでね。でも…欲を言うなら、あの時助けて欲しかった。』

出来るだけ早く文章を読む。早く最後まで目を通したい。

「ッうそ、だ…ろ………ッ!!」

ただただ、書かれていることに対してこれは事実無根の事なのだと、そう思いたかった。

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