俺と僕とそれから | ナノ


19


「みんなお待ちかねの!結果発表やでぇ!」

司会の声でざわついていた体育館の中が再び静かになる。

「俺…帰る。」

どうせ入賞してないと思い友哉はこの場を離れることを望む。

「臆病モンが…。」

白石が挑発。

「ぁあ?んなこと言われる筋合いねぇだろうが、…分かったよ、残ればいいんだろう?残れば!」

次々と入賞者の名前が呼ばれる。しかし友哉の名は呼ばれない。

「次!準優勝者ぁ…は遠山金太郎君や!」

金太郎の名が呼ばれテニス部歓喜。友哉も喜ぶ様につられて喜んだ。


「残るは優勝者やでぇ!…優勝者は異例の三年生での参加の…守本友哉君や!」




「へ?俺?」

お目めをぱちくりさせてキョトン顔の友哉だ。

「なんや、ホンマに最後まで気づかんかったんか?体育館の中が静かになったのは自分の装いに引いたんやなくて、クオリティーが高すぎて静まり返ったんやで?」

呆れたように白石が言う。

「マジか!?」

「ホンマや、ほら司会者が呼んどるで?行ってき。」

「お、おぉ。」

友哉は促されるままステージ上へ。今度の体育館は賑やかだ。

「えー…投票のコメントとしては…【守本君がこんなにユーモアな人だとは思わなかった】【女の私にその色気を分けてください】【俺と付き合ってくれ】【この先性転換する予定はないんですか?】【女辞めたくなりました】【結婚したい】【結婚しよ】などなど…。どうですか!?今の心境は!」

「え、…あの。正直嬉しい、です…よ。」

たどたどしく答える友哉。戸惑っている感MAXだ。

「だそうです!もう一度優勝者守本友哉君に大きな拍手を!」

体育館が大きな拍手に包めれる。そして解散になり友哉も着替えるために部室に戻る。

「はー…疲れた。」

「友哉さんお疲れ様でした。」

「おー、財前…お疲れたぜー。」

財前の言葉に返事しながら着物を脱ぐ。

「友哉ー、これから人気者やでぇ。」

「ほんとか?なんかまだ実感わかねーよ。」

「そらそやろ。まだ生徒と関わってないやん。教室行ったらすごいことになってんでー。」

「ほんとか?それは嬉しーな。よし、着替え終わった。謙也、教室行こうぜ。」

「ほな行こか。」

「じゃ財前、また部活で!」

「あ、ハイ。お疲れ様でした。」

部室に居たメンツに簡単に挨拶をして教室へ向かう。

「守本君!」

教室に着くなりクラスの女子が話かけてきた。

「ん?何?」

初めてクラスの人に話しかけられた。

「今まで…話しかけなくてごめんなさい!」

「…や、いいよ。原因は俺にあったわけだし、これから短い間だけど仲良くしてくれれば。」

器の広い男友哉、ここに誕生。

「なんやねん、散々ぶちぶち文句言いよったのは誰や。」

「白石ー、ちょっと黙ろうか?クラスのみんなは…俺が怖かったんだろ?」

そう聞くと無言になる。無言は肯定ととろう。

「でもさ、俺だって怖いだけじゃねーし…みんなと仲良くしてーし……だからさ、ホント話しかけてくれて嬉しいぜ!」

ニカッと笑う。
やっと友哉がクラスに馴染めた瞬間だった。

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