俺と僕とそれから | ナノ


09


「友哉さん!来てくれたんですね!」

放課後になって謙也に連れられテニスコートへ登場した友哉。出迎えてくれたのは財前だった。

「あぁ、約束したしな。」

「光に…しっぽが見える気ぃする…。」

忠犬という表記がぴったりな財前なう。

「今日の練習なにすんだ?」

「試合形式の練習です。」

「へー、財前はシングルスか?」

「いえ、謙也さんとダブルスです。」

「謙也と組んでんのか…大変だな。」

「ホンマですわ。」

「なんでやねん!」

「冗談冗談、俺お前らがまともに練習してる所は見たことねぇからな。ほら、早く試合っぷり見せてくれよ。」

「友哉さんがそう言うなら…謙也さん、さっさと相手捕まえて試合しますよ。」

「…こんな光見とぅないでッ!」

謙也の叫びもむなしくやる気満々な財前に腕を引かれてコートの中へ。間もなくして試合が始まった。

「ふーん…楽しそうにテニス出来んじゃん。」

…………。

「守本…君。」

「ん?」

謙也達の試合を見ていた友哉だが名前を呼ばれ振り返る。振り返れば図体の大きい千歳が居た。

「あ、俺を担いで木に縛りつけた奴だ。」

敵意むき出しで、嫌味MAXだ。

「……すまんかったばい。」

腰を90°に曲げて謝罪。そんな謝罪を冷たい目で見つめている。

「…謙也には、ちゃんと謝ったのか?」

「あい。」

「謙也はお前を許したのか?」

「許して…もらえたと…。」

「そうか、なら俺も許しておこうかな。」

「ホンマ!?」

「あぁ、謙也が許したなら俺がいつまでも許さないっつーことは出来ないだろ。あの時お前らは俺を謙也としていたぶってくれた。俺は身体的に痛かっただけだ。そんなのはすぐ治る。けどな、謙也は心が痛めつけられた。分かるか?心はなかなか治んねーんだぜ?下手したら一生治んねぇ。ここに来て…さ、謙也が楽しそうにテニスを続けてて…それだけでも俺は、嬉しかったな。けどな!お前に言っても意味ないと思うがな!言うとだな!白石は絶対ぇ許さねぇ!」

「……それ、矛盾しとるばい。謙也は白石のことも許しとったと。」

「……昔の自分を見てるようで嫌なんだよ。お前に話す義務はないが、俺は昔白石みたいなことをしちまったんだよ。取り返しのつかないことをしたんだよ、俺のせいで一人の幼馴染の人生が狂ったんだ。俺は助けられる力がありながら助けるってことはしなかった。だから俺はまだ、自分のこと許せてねぇ。だから白石も許せねぇ。」

「………。」

「随分と…自分本位な考え方しとるんやな守本。」

千歳と話していたはずが白石が乱入してきた。

「ぁあ?んだよ白石、盗み聞きか?」

「そんな趣味悪いことせんわ。俺は千歳に用があったんや。」

「何?」

「試合や、コートに入り。」

「分かったばい。…守本、許してくれてサンキューったい!」

「おうおう、試合頑張ってこい。」

千歳がコートに入りここに残されたのは友哉と白石。

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