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「ッるぁぁあああぁああ!」 「ずいぶんな挨拶やないか守本。」 友哉の拳を受け止めた白石。膝の上に置いていた弁当を横にいた小石川に渡しての用意周到っぷり。 「なんでテメェが居んだ?ぁあ?俺の視界に入ってくんなっつったよな。」 「冗談。ここはテニス部が昼使うってことになっとんや。自分が後から来たんやろ?やったら守本が自分から俺のこと視界に入れたんとちゃうんか?それよりここはテニス部が使っとるんや、部外者はどっか行けや。」 「うっせーな、理屈云々ぬかしてんじゃねーよ。俺が入れようが、入れまいが、テメェは俺の視界に入ってくんじゃねーよ。」 「なんや、支離滅裂やで?頭弱いんとちゃうか。」 「ぁあ?やんのか、テメェ。」 「ええで?」 二人とも構え直し、向かい合う。 あの時のタイマンの続きが、今―――。 「ドあほ!止めんか!」 「ゥオ!?」 「部長、いんでください。」 「グェ!?」 白石と友哉が殴り合おうとしたときに、友哉は謙也に背中から羽交い締めにされてその場に固まった。白石は財前の足払いを食らい見事に転倒。 「俺が友哉を連れてきたんや!」 「俺が謙也さんに頼んで友哉さんを連れてきてもろうたんです。文句ありますか?」 「………。」 転んだ時に顔面を強打したのだろう。鼻の頭が赤くなっている。そこをさすりながら白石は財前を睨んだ。 「プっ…無様。」 友哉がプスリ、と笑った。 「ぁあ?」 「受け身位とれよ、ダッサ。」 「いてこますで、ワレ。」 「やから、やめぇ言うとるやろ!」 「白石部長はアホやないですか?」 財前が先輩の白石に向かってアホだとはっきり言い放った。 「は?」 まさか後輩にそんなことを言われると思っていなかった白石はポカンだ。 「ホンマ、部長は昔友哉さんにマウントまでとられたこと忘れたんすか?それに俺が謙也さんに頼んで友哉さんをここまで連れてきてもろうた言うたじゃないですか。部長こそ頭弱いんとちゃいますか?ケンカのしすぎで脳細胞死滅したんですね。すでに手遅れなんすか、可哀想ですね。それに友哉さんに視界に入んな言われとるんやったらその通りに出来る努力っちゅーもんしたらどうですか?あぁ、頭弱い部長には難しいことでしたね。ハァーア…。なんで、こんなんが四天宝寺をしめてんすかね。さっさと友哉さんに譲ればええですのに、…先生の前ではええ子ぶりっ子しとって、見れるこっちは滑稽でしかないんすけど。ホンマ勘弁してくれません?腹筋捩れて苦しいっすわ。あーあ。部長の馬鹿のせいで友哉さんと話す時間が短くなったやないですか。貴重過ぎる時間を返してくださいよ。それより友哉さんと同じ学年、その上同じクラスってどういうことですか。そんなに友哉さんと同じクラスが嫌なら代わって下さいよ。謙也さんもいつまで友哉さんを羽交い締めにしとるんすか、いい加減離してください。その両腕切り取りますよ?さらには密着してる胴体削ぎますよ。言い忘れとりましたけど、部長のその赤っ鼻…ダサいっすわ。」 最後に鼻で笑った財前だった。謙也にもあたって、少しすっきりとした表情になった。 謙也は財前の気迫におされ友哉を解放した。白石もこけた姿から立ち上がり元の場所、小石川の隣に移動した。 「……光って…こんなキャラやったか?削ぐって…。」 「ダサいっすわ…初めて言われた気ぃするわ。」 「財前、お前最高だな!」 謙也と白石は財前の言葉に対して恐怖を感じているというのに友哉はハハハッと笑い飛ばした。 「友哉さん、隣来てください。」 財前が自分の横へと、友哉に声をかける。 「おぉ、サンキュ。」 友哉もその声に従い財前の横に腰を下ろす。 「そういえば友哉さん弁当とか無いんすか?」 これからご飯を食べようと言うのに友哉の手には弁当も何もない。速い話、手ぶらだ。 「ん?俺の昼飯はこれだぜ?」 と言ってポケットから取り出したのは10秒飯(エネルギーイン)。 「…そんなんで足りるんすか?」 「朝、昼は大体これだぜ。夜は家の時は親が作ったもんがあったけど、ここではコンビニ飯だな。」 |
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