Hetalia Axis Powers | ナノ


01


若葉の茂る季節。フランスとイギリスの百年戦争の真っ只中、一人の少女が城の庭を駆け回り捜していた。

「祖国様?祖国様ぁ!どちらにいらっしゃるのですか!?」

そう、少女にとっての祖国。つまりはフランスを捜していたのだ。城の中には居なかった。もしかしたら、イギリス軍に捕まってしまったのかもしれない。少女は不安でいっぱいになっていた。

「あぁ、こっちこっち。」

声が木の上から降ってくる。フランスは木に登っていたのだ。

「危ないじゃないですかっ!何故こんな所に登っているのですか!?」

「ごめん、ごめん。ほら、下に居たら暑いでしょ?ここって結構涼しいんだよ。」

「驚かせないでくださいっ!…いくら探してもお姿が見当たらず、イギリス軍に捕まってしまったかと思ったじゃないですか…。」

「…ごめんね。でも君は逃げなくて良いの?本当に負けそうなんだよ?死んじゃうよ?」

「…何暗くなってるんですか。私は、この国が、貴方が好きだから、愛してるから逃げませんよ。負けたとしても死にません、祖国様とずっと一緒に居たいです。」

「そっか…ありがとう。」

この少女だけは逃げてほしかった、今すぐにでも逃げてほしい。この戦争に負けてしまったらこの少女はイギリス軍の手によって殺されてしまうかもしれない。いや、殺されてしまう。まだ20歳にも満たない少女だというのに、それだけは阻止したい。

フランスは思考を巡らせる。しかし、これは詭弁でしかない。フランスは無意識の内にこの少女に恋をしていた。だから逃げてほしいと願った。しかし、フランスは自覚していない。変なとこで鈍い。これでよく愛の国と言えたものだ。

「では、祖国様。ちゃんと隠れていてください。でないと守りきれません。」

「ぁっ待っ。」

一緒に逃げよう、と言いたかった。ここから逃げてどこか小さな家で誰にも見つからずに暮らそうと、言いたかった。

「何ですか?」

「……なんでもないや。」

「そうですか、ではまた。」

「……っ。」

言えなかった。一緒に逃げるなど不可能だった。フランスは既に自分の体を思うように動かせなくなっていた。この戦いのガタがきたのだろう。そんな身振りを見せなかったのはなぜだろう。ダサいからだろうか。カッコ悪いからだろうか。そんなことではない。少女に余計な心配をかけさせたくなかったからだ。だから見えを張った。

少女一人でも逃げてほしかったが、そんなことを素直にきく筈が無いと思い、諦めた。
本当ならここで諦めるべきではなかったんだ。


戦いは激しさを増していった。フランスはより劣勢に追い詰められる。「こんなの勝てるわけがない。」と逃げ出す兵が増えていく。そんな兵を見てジャンヌが叫ぶ。

「後ろへ退くな!逃げ出すんじゃない!戦うんだっ!ここで退けば王や祖国も殺られてしまう、王や祖国を我々は見殺しにして良いのか、この国を見捨てるのかっ!イギリスに屈したら二度とフランス国は存在しなくなるぞ、良いのか!?今までの努力も、今まで大切にしてきたものが無くなるんだ!今まで過ごしてきた土地を敵に蹂躙されてもいいというのか!?今逃げるということはそういうことだぞ!私は嫌だっ!!此処が最後の砦になるんだ。王を……祖国を守るんだっ!」


ジャンヌの言葉で士気を失いかけた兵達は立ち上がる。ジャンヌの言葉で気持ちを高める事ができたからだ。ジャンヌはまるで民衆を導く自由の女神のようだった。自分達の国を守ろうと、最後まで足掻こうと立ち上がる。

しかし、戦況は無情にもフランスが負けている。決着が着くのも時間の問題だ。ジャンヌはフランスだけでも逃がそうと城の中に入っていく。そして、フランスが居る二階の奥の部屋に着いた。

「祖国様っ!お逃げください!もう、もちません、祖国様だけでもっ!」

「っ嫌だ!」

何故フランスは拒むんだろう。もう、逃げ出すしか術はないのに。

「お願いですからっ!」

「ッ…。」

何故何も言えないのだろう。ただ一介の少女なのに、どこにでも居そうな少女なのに、どうして手放すということが出来ないのだろう。

ここでフランスはようやくジャンヌへの恋を自覚した。遅かった。すべてが遅かった。すぐそこまでイギリス軍が迫ってきている。

「探せっ!魔女と国をっ!見つけて引っ捕らえろ!!」

イギリス軍がすぐそこまで来ている。敵兵の声がすぐそばまで近づいてきた。

「祖国様、無礼を働くことをお許し下さいッ!」


ジャンヌはフランスを窓の方へ突き飛ばた。フランスは何が起きたのか、事態が把握できなかった。把握できたときには自分は城の外の茂みの中に居た。さっきまで居たところに視線をやると最前線のイギリス軍の中にイギリスが居た。落ちていったフランスを悲しそうな両目で見ている。何故、そんな目で見られなければならないのかわからなかった。そして、鈍い音と短い悲鳴が聞こえた。ジャンヌはついに敵国捕まってしまったのだ。


「あぁあぁあッぁぁぁああぁあぁあぁぁぁああぁあぁあぁぁぁあっっ!!!」


フランスはその場を駆け出した。いうことのきかない身体で、イギリス軍に捕まらないように、森の奥深く、誰も近づけない森の奥深くまでフランスは逃げ込んだ。

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