Prince of tennis | ナノ


一緒に嗤いましょう


いつの間にか俺は一人ぼっちになっていた。少し前まで俺は、皆と笑ってテニスをしてたのに、どうして?どうして、俺は今、皆から暴力を受けているんだろう。

「クソクソ!鳳!またあいつを虐めやがって!なんでそんなひでぇことすんだよ!」

「ッ…。」

違います。俺は虐めてなんていません。どうして向日さんは俺のことを信じてくれないんですか?俺の方がみんなと長く関わっていたのに…。


「ねー、長太郎?どうしてそんなひどいことが出来るの?ねぇ、どうして?答えてほしいC。」

「……ッぅ。」

酷い事?そんなこと俺はしてません。俺は何もしてません。どうして先輩たちは、俺をこんな目に遇わせるんですか?俺って何かしましたか?


「鳳、お前虫も殺せないような奴かと思ったら、こんな畜生だったんだな。幻滅だ。」

「…ぃッ!」

日吉…俺、校内じゃいつも一緒に居たじゃなか。なんで俺の無実を証明してくれないんだ?俺、悪くないのに。どうして?日吉のこと俺は買いかぶりすぎてたのかな…?俺の方こそ、幻滅だよ。


「ホンマなぁ、自分ええ加減にしとかんと…俺も本気でやるで?」

「…は、ァッ。」

忍足さん、この強さでまだ本気じゃないんですか。参りましたね。流石にこれ以上の強さの暴力を受けること俺は耐えれそうにないですよ。やめてくださいよ、痛いのは苦手なんです。でも、あの人が俺に近寄ることで傷つくことがもっと嫌だなぁ。


「鳳、本来ならお前を退部処分にはしてぇが、そんなことしてお前を監視することが出来なくなったらあいつにまた被害が及ぶかもしれねぇ。だからお前は毎日ここに来い。いいな?」

「ッ…。」

監視、ですか。監視するならもっと、もっと穴が無いようにして下さいよ。中途半端に俺のアリバイが無いようにして、だから俺の罪はまた捏造されるんだ。俺は何もしてないのに!


「アーン?返事は?そうだ、お前の言い分も聞いてやんねぇとなぁ。何か言いたいことはあるか?」

「……宍戸、さん。宍戸さん…は?」

ここに姿のない宍戸はさんは?宍戸さんは無事なんですか?俺に暴力を振るってこないってことは跡部さん達に逆らってるってことで、


「宍戸?…あぁ、あいつも俺らの方に来たぜ?なんでもお前のことはもう信用ならなくなったらしい。残念だったな。お前の味方は誰一人いねぇ、アイツを虐めたこと最期まで後悔するんだな。」

跡部達は耳に残るような笑い声を残して鳳の周りから消えて行った。

「……ぇ?宍戸さん…が?」

宍戸さんも俺の敵?嘘だ、でも…俺には暴力振るったこと無くて、あれ?でも宍戸さんは守ることもしてくれなくて、俺の無実も証明しようとしたら出来る位置に居るのに、してくれない。だったら本当に宍戸さんは俺の敵?




―――!
――――――!!

「―――長太郎!!」

鳳が痛みを和らげようと少しだけ休んでいたら宍戸が走ってきた。

「…………宍戸さん?」

「長太郎!長太郎!!ゴメンなッ、いつもこんな風に駆け付けることしかできなくてッ!」

「…ホントそうですよ。遅いですよ。それも計算のうちですか?」

違う、違う…俺の言いたいことはそんなことじゃない。


「なに、を…。」

「さっき跡部さんが言ってましたよ。宍戸さんは俺のことを信用しなくなったって。よく考えたら宍戸さんは俺のこと全然守ってくれないじゃないですか。いつもいつも、遅れてきて、俺がボロボロになってる時に声をかけることしかしてくれないじゃないですか。本当は心の中でいつも笑っているんでしょう?懲りない奴だなって、もういいですよ。宍戸さん。俺を慰める演技なんてしなくても。本当は苦痛でしょう。どうでもいい奴に優しい言葉をかけるのも、そうでしょう?中途半端な優しさなんて要らないんですよ。」

そんなこと、ないです。いつも宍戸さんには助けられてました。現に宍戸さんが居なかったら俺はもう命を絶っていたかもしれないのに、なんで俺は心の支えである宍戸さんにこんな暴言吐いているんだろう。

宍戸さんは下唇をかみしめていた。下を向きなにか悔しそうだった。何をそんなに悔しく思っているんだろう。そう思っていたら宍戸さんが顔をあげ、鋭い目つきを下と思ったら右手を大きく振りかぶった。


「――っ!?」

俺の頬を叩く音が鈍く響いて、俺は少し放心した。

「長太郎、目を覚ませよ!なんで跡部なんかの言い分を鵜呑みにしてんだよ!確かに俺はお前を助けてねぇし、守ってもねぇ臆病モンだ!でもな、俺がお前を庇ったところでお前はいい顔をするか!?しないだろう!前、お前は俺に言ったよな『俺のせいで宍戸さんまで傷つく必要性はない』ってよ!だから俺は飛び出そうになる体を必死に抑えて、押さえて、アイツらが居なくなってからお前を少しでも癒そうと、体の傷は放っておいても治るが、心の傷は治んねぇ!俺はお前の心だけは守ってやろうって、いつも…いつも、お前の心が軽くなる様にって、慰めてきたが、お前はそれが気に食わなかったんだなぁ!矛盾してんだよぉ!」

「……痛いじゃないですか、やっぱり宍戸さんは…俺の、敵……。」

宍戸さん、そんなに俺の為を思って、ありがとうございます。お礼の言葉を言いたいのに、なんで俺の口はそんな言葉ばかり言ってるんだ。宍戸さん止めてください。お願いします。俺を、俺の口から俺を言わしてください。

「イテェだろうな!でもな俺も激イテェんだよ!!手も、心も!……お願いだ、長太郎。俺を頼ってくれ、俺はお前の味方でいるから…もう、これ以上壊れるお前を見たくねぇんだよッ。」

宍戸さんは静かに涙を流す。とても静かに、


「……宍…戸さ、ん。だったら、証明してくださいよ。俺の味方ってこと、」

ありがとうございます。ホラ、口動いてよ。ありがとうございますって、ありがとうございますって言って、ありがとうございますってさぁ!言ってよ!言えよ!鳳長太郎!


「………分かった。」

宍戸さんは短く返事をして俺の前から去って行った。
俺が次に見た宍戸さんの姿は、まるで自分の姿を映してるんじゃないかと錯覚を起こすぐらいのボロボロの姿だった。

「え…?」

「よう、鳳。お前もこれで懲りるんだな。お前の味方になったやつって言うのは、こんな風になってな。まぁ、お前みたいなやつの味方になるなんて言うモノ好きはこいつぐらいしかいないだろうがな。折角お前から放れられるきっかけを作ってやったのに、激ダサだな宍戸。」

跡部さんはそう言い放って、俺の肩をポン、と叩きこの場を去って行った。この場に残るのは俺と、信じられない姿の宍戸さん。どうして地面に倒れているんだろう。そこに倒れているべきは俺のはずなのに。


「宍戸…さん?」

「…長太郎…か?な?俺、お前の…味方だろ?」

「ッごめんなさい!!ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

なんで俺は一時でも宍戸さんを疑って、あんな言葉を吐いてしまったんだ!どうして、俺の口はあの時あんな言葉を紡いでいたんだ!

「おい、おい…俺は、そんな言葉が聞きたいわけ、じゃ…無かったんだけどな……?」

「宍戸さんッ!」

どうしてこんな目に!どうして宍戸さんまで!宍戸さんは何も悪くないじゃないか!あいつら絶対に許さない!許さない!!許さない!!!あ………そうか、そうだったんだ。俺、あいつらに復讐したいんじゃないか。宍戸さんをこんな目に合わせた奴らを復讐したい。そんな名目を作りたかったんじゃないか。だから、俺の口はあの時あんな言葉を言ったのか。だったら、納得だ。
俺は、俺だけでなく無実の宍戸さんまでに暴力振るった最低な奴らっていう、そんな定義づけが欲しかったんじゃないか。
これからの俺の行動を正当化するために。

「宍戸さん、守ってくださってありがとうございます。俺、あなたをこんな目に遇わせたあいつらが許せません。ですので、復讐しますね!」

「長太郎…ッゴメン……そんなにしちまって…ごめん!」

「なんで謝ってるんですか?謝らないで下さいよ。宍戸さんもすっきりするような復讐劇一生懸命考えますから、ね!」


俺はしっかり笑えてるだろうか?
嗚呼、宍戸さん、そんな泣きそうな顔しないで下さい。



俺と一緒に、嗤いましょう!








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300000hit企画第7弾
蒼空様リクエスト「氷帝、鳳嫌われ。味方→宍戸」でした。

意味わからない話になってしましましたね。すみません。ようはあれです。「鳳黒属性に変化!?」の瞬間だと思って下さったら分かりやすいかと…。
宍戸に言っていた言葉が本心で、心の中で言っていた言葉が、建前です。ギャグによくありがちな技法をこんな風に使ったら、こんな風になっちゃった。

宍戸は責任感有りすぎそうですからね。ちょっと、可哀想な立ち位置になってしまいましたが、管理人的に宍戸は可愛そうな目に遇って欲しいキャラなんですよね。いや、愛はありますよ?しかし…もう少しで宍戸死ネタになるとこだった…危なかった……。
ちょっとだけ、テニミ/ュネタを入れてみました。いつの日かの日替わりだった気がする。

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