初めまして、仁王雅治です。 |
歪P様の『白黒病棟』のパロディの小説になっています。 「仁王雅治はつかみどころがない。」 「仁王雅治は変わっている。」 「仁王雅治のキャラは変わっている。」 「仁王雅治は交換されている。」 噂がある。仁王雅治は人格を交換されているという噂が、誰が広めたのかは知らない。 所詮は子供たちが言う噂、仁王が詐欺師と呼ばれていることもありすぐにそんな噂は消えた。 噂が立たなくなっても釈然としない男が一人。 毎日毎日毎日、違う仁王がその男に挨拶をする。 柳生比呂士、ダブルスのパートナーにだ。 ある日柳生は仁王に言った。 「仁王君、毎日変わっていませんか?」 質問をした。 仁王は少々驚きながらも「変わっとらんよ。」と答えた。 「そうですか。」 場つなぎの質問だったのだろう。深くは聞かなかった。 次に仁王が問う。 「もし変っとったらどうするぜよ。」 「そうですね。もう変わってほしくはないですね。毎日の出来事、思い出は1対1で分け合いたいものです。」 仁王は返ってきた答えに微笑んだ。 「……そうじゃな。」 次の日から仁王は学校に来なくなった。 柳生に連絡も何もなかった。いつもなら何かしらの連絡があるのに。 仁王が学校に姿を現さないようになって3日。柳生は連絡が無く学校に無断欠席をしていることを不審に思い仁王宅に向かった。 玄関を通され一階にある仁王の部屋に行ってみる。 不自然に整頓されている。そこは人が生活している雰囲気ではなかった。つまり、仁王は自分の部屋では生活していない。 おかしい、学校に来ていない人間が自分の部屋で過ごしていないなんて。 「仁王君あなたは何処に居るのですか!」 部屋を見回すと一角に服や物が盛られている。まるで何かを隠しているかのように、 荷物をどけてみるとその下には鉄でできている扉がった。開けてみると下に続く梯子がある。 ここから先に入ってはいけないという警報が柳生の中で響く。しかし柳生は足を進めた。 仁王の部屋にこのような仕掛けがあることはおかしいと思って、あるいはただの興味本位で。 降り終わるとそこには真っ白い空間が続いていた。柳生は奥へと足をゆっくと進める。 白 白 何処を曲がっても 白白 此処を曲がっても 白白白 白一色、頭が可笑しくなりそうだ。 目の前に現れた三叉路を曲がる。 曲がったところで全力疾走。こんな空間居たくない。 早く出たい。 しかしそれはかなわない。すでに柳生は迷ってしまったから。引き返せない引き返したら余計に迷う。何度曲がったか何処で曲がったか覚えていない。進んで誰か人に会うことを願って進み続ける。 「…っ誰かいないんですか、ここは!」 思わず叫ぶが誰もいない、自分の声が壁に反響するだけだ。 ふと脳裏によぎる。 「仁王雅治はつかみどころがない。」 「仁王雅治は変わっている。」 「仁王雅治のキャラは変わっている。」 「仁王雅治は交換されている。」 という言葉が、 もしかしたら本当に交換されているのではないか。ここは仁王を交換する実験室ではないか? まさか、そんなバカバカしい。 柳生は考えることをやめて走ることに専念した。此処から出て仁王に直接聞けばいい。 此処を曲がろう。 白い壁はまだ続く。 其処を曲がろう。 白い道は続いている。 そこの十字路を曲がろう。 その先には道はなかった。行き止りだ。柳生は心の中で舌打ちをする。 しかし、柳生の苛立ちはかき消されることになる。人が、仁王が行き止りに倒れているのだ。 「仁王君!?」 柳生は駆け寄る。 「ぁ?」 仁王に意識はあったようだ。短い返事が返ってくる。 「ここは何処なのですか!……いえこれは後から聞きましょう。とりあえずここからでなければ、出口はどちらにあるのです?」 仁王は今すぐ折れてしまいそうな腕をスッと伸ばし突き当りの壁を指差した。 「其処。」 柳生が壁に近づき押してみると向こう側に開いた。仕掛け扉になっていたようだ。 「…仁王君、行きましょう。」 柳生は仁王を背負い、道を進む。 薄暗く道は続く。側面に淡い光を放っている照明はあるが照明の役目をはたしていない足元まで光が届いていない。 進んでいくと床の材質が変わったようだ。否、砂利が敷つめられている。ざりざりと足音が一つ。壁に反響し幾人の足音に聞こえる。 目が暗さに慣れてきたところで扉が現れる。柳生は少し躊躇しながらも、扉を開ける。この先に出口があるならば、 扉を開けた瞬間に、肉切り包丁が柳生の背中に居る仁王めがけて飛んできた。飛んできたという表現よりも投げつけられたといったほうが正しいかもしれない。柳生は突然のことで反応ができなかった。投げられた包丁は仁王の額に刺さる。 「あああぁあぁぁぁぁああぁああぁぁああああぁあぁぁぁぁあぁっ!」 「に、おう…君?」 血飛沫が舞う。 こんなに血の色は鮮やかなものだったでしょうか。 飛沫が柳生の口をかすめる。 血というものは、こんなに甘露でしたでしょうか。 現実逃避だ。そんなわけない。 仁王が投げられた包丁によって殺されたという現実から目を背けたいがために思ってしまった錯覚だ。 仁王は最期の言葉を言い残す。 「視界、の端に…気をつけ、て……。」 いったい何のことなんだろう。視界の端なんて、 柳生は半開きのままになっている扉を完全に開けた。そこには道でなくだだっ広い空間があるようだ。照明は全くない。 黒い 黒一色だ。 黒 黒黒 右を見ても左を見てもわからない。此処は何処なのだろう。 黒 唯一この場所を知っている仁王はすでに息をしていない。この先、どのようになっているかなんて誰が知ろう。 黒い空間はまだ続く。 此処は何処だ。 其処に行けばわかるのか。 真っ暗で何も見えない。 目を慣れさそうと柳生は立ち止まって目を閉じる。 何分時間が経っただろう。 もういいだろう、そんなときに足音が聞こえる。 廊下と同じような音を立て、 ざりざりと、ずりずりと確実に柳生に近づいてくる。 柳生は目を開け振り返ろうとする。 振り返り柳生の視界の端に入ってきたのは血まみれの仁王の姿とと血まみれの仁王に引きずられている仁王の姿。 柳生の目の前に二人の仁王雅治の姿が見える。 「あーぁ、なんで柳生がこんなところに居るんかの?俺はおまんが変わってほしゅうないって言ったから、変わらんようにって次々来る成り代わりの奴らを殺っとったんに。」 「ぁ…ぁ……………。」 柳生から言葉は出てこない。出ようにもなんて声をかけれはいいのかわからない。自分が今背負っているのは仁王のはず、でも目の前にいるのも仁王のはず。 仁王は俺が引きずってるのが91人目で、柳生が背負っとるんが90人目な。と嬉々として言う。 「仁王雅治は交換されている。君も言っていたでしょ?あの噂本当だよ。初めまして、とでも言っとこうかな。梛木香織です。89人目の仁王雅治に選ばれました。」 ペロリと口元にかかっていた返り血を舐めながらの挨拶。 3日ぶりに会うことのできた仁王、否。 梛木香織は何が可笑しいのか笑っている。 柳生は訳も分からず立ち尽くすしかなかった。 ―――――――――――――― ――あとがき―― 2011,04拍手 名前変換が二回しかなかった罠 以下解釈の説明。 まず、「仁王が交換されている」の真相ですがトリップ成り代わり、で大体が説明つきます。 仁王は人気キャラで成り代わりたいって思う人たちがたくさんいるとします。 その願いが思っている人全員叶うとします。 ですが仁王に成り代われるのは一人です。 仁王は一人しかいませんしね。なぜか同じ世界の仁王にしか代われません。 パラレルワールドは存在しません。今回は存在させません。 トリップ成り代わりの代償として前の仁王を殺すことが条件にトリップします。 毎日一人ずつトリップして、一対一の殺し合いが夜から朝にかけて行われます。 だから毎日学校部活に行っているのは違う仁王になります。 そして柳生に変わってほしくないと言われた仁王を89人目の仁王とします。 トリップは毎日繰り返されるために89人目は90人目、91人目……を殺して生き延びなければなりません。 しかしトリップしてくる人たちも成り代わりたいために血眼になって反撃してきます。 夜から朝にかけて死闘は終着するはずが(前の仁王がまぁ、成り代われたからいっか…という諦めにより決着する。) 89人目が諦めなかったがために死闘は、89人目は場数を踏み始めたから負けないけど一日かけて行われて、学校にいけない日が続いた。 で、柳生さんが仁王家を訪れた。 柳生が一番に会った仁王は90人目。 90人目に包丁を投げたのは91人目。 91人目は引きずられていた仁王。 91人目を引きずっていた仁王は89人目。 裏設定で、柳生が砂利だと思っていたのは白骨です。 前仁王達の骨です。 腐敗をすっ飛ばして骨になります。 |
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