近づく足音に怯えるのはやめた

無理矢理アレルヤによって表に放り出されたハレルヤは不機嫌を隠さず眉を寄せている。
「何か用かよ……」
けれど相手を威嚇するその表情も今は怖くない。
彼は何かに怯えている、そのことがよく分かったから。
「ハレルヤに言いたかった」
「言うな」
すかさずハレルヤの制止が入るが、従うつもりはなかった。
「私、ハレルヤが好きだよ」
意外と言葉はすんなり出てきた。それでも言い終わると心臓が身体から飛び出しそうなほど暴れていることに気付く。
「なんで」
そう呟いたハレルヤの声は苦しそうで、少しだけ気持ちを伝えたことを後悔した。
けれど、それでも、この我が侭を貫き通したかった。
頭の中では既に私にとって都合の良い話が出来上がっている。ハレルヤの悩みも私が取り除いて、二人で笑えたら、なんて。
(それはきっと、あり得ない、夢のようなもの)
「……今言うのかよ」
「だって、いつ言えるか分からないんだよ?」
「言ってどうすんだ」
「分からない。けど……ハレルヤがいいなら、これからもずっと傍にいたい」
「…………。無理、だろ」
「……そっか」
(ふられちゃった)、という事実はすんなり受け入れられた。
失恋とは思っていたよりも衝撃的なものでも何でもなかった。失恋をしたとしても、この気持ちは消える訳ではないのだから。
それでもこれ以上ハレルヤの邪魔にはなりたくなかったから立ち去ろうとした。
そのとき、私が移動用のレバーを握ったとき。ハレルヤは私を呼び止めた。
「名前」
「へ?」
「……今だけ、傍にいろ」
「え……」
この言葉の方が、私にとってひどい衝撃だった。


(さいごまで君がいてくれるから)




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