あの空に還る日はそう遠くない

ブリッジから来た名前に会ったのは本当に偶然だった。
アレルヤは今誰とも会うつもりはなかった。今の状況はこれまでで一番厳しい。
もしかしたらソレスタルビーイングの壊滅も免れないとも思っていた彼は、だからこそ誰かに会うことが怖かった。
死ぬならせめて誰にも何も残さず死にたい。それがアレルヤの思いだった。
「アレルヤ、よかった。会えて」
けれど会ってしまったものは仕方がない。
名前は赤く腫れた目を細めて微笑む。その声音には安堵がみえた。
「こんなときに言うのも何だけど。……この戦いが終わったら、ハレルヤと話させてくれないかな?」
「……それなら今呼ぶよ」
アレルヤは即答した。
生きて帰って来られるという自信を持てなかったからだ。
(ハレルヤ、出てきて。僕は、君には後悔をしてほしくないんだ)
最期まで自分に付き合わせることを申し訳ないと思いながら、己の内側に呼び掛けた。けれど半身は内側で胡座をかいたまま表に出ようとしない。
『やめろよ』
(どうしてだい?)
『だって、どうせお前だって』
(でも、君だけはどうか)
『馬鹿言うな、アレルヤ』
アレルヤは彼を引きずり出すことにした。
ハレルヤは表に出たくない訳ではない。
ただ優しい彼は半身の己に気を遣っているだけなのだ。
『馬鹿かてめぇっ』
(ハレルヤ、大好きだよ)
アレルヤは内側に沈んでいく。
すれ違ったハレルヤが此方に手を伸ばしたがその指はただ闇をかいた。
(君だけはどうか、自分に嘘を吐かないで。僕の出来なかったことが出来る君だから)
満ち足りた気持ちでアレルヤはおちていった。
(君の命に感謝と祝福を)


(けれど君だけは世界に返せない)





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