prologue


期待に応えられなかったのは私の弱さ、私の所為だ。
だから私の手で終わらせようと思った。

 I danced, and danced and danced desperately.
 But nothing produced.

無責任にのし掛かるプレッシャー。
痛く刺さる期待の眼差し。
苦しかった。重かった。辛かった。
けれどどうすれば良いのか分からなかった。
逃げたかったけれど、出来るはずがないことは知っていた。
だから私はその果てに、止める事を選んだ。

 The stage is finished if it cuts the thread of the marionette drama.
 The knife lets it easily close.

「…………」

人を刺した感触と人の命を奪った感覚がぐるぐると身体中を回る。
気持ち悪い。
疲れた。
呆気ない。
(死んだ……。殺した)

握りしめた包丁を手放せない。
そこからしたたる赤い液体がまた一滴、フローリングの床に落ちてゆく。
あんなにも強大で私を支配していたものが呆気なく霧散する。
あんなにも恐れていたものが、いとも簡単に崩れ落ちていった。

 She collapsed.
 She lost the thread which had been supported, and fell into the ground.

「おやおやおやおや? どうやら当たりだったようだね」
いつのまに。
その男が其処に立っていたのか分からない。
黒髪オールバック、眼鏡、スーツ、長身の男。
何処にでもいそうな彼に寒気と嫌悪を覚えたのは、この現場を見られたからか、それとも「この現場」に平然と存在している彼に恐怖したからか。
自然と、包丁を握る手に力がこもった。

 However, the marionette must dance again.
 It is not got away from the fate as far as she is a marionette.

醜悪な人形劇が幕を開ける。
開幕ベルは刃物が重なる旋律で。






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