真庭蜥蜴という少女


年々困窮してゆく里に、「最初に死ぬのは自分かなぁ」とぼんやり思っていた。
幼い頃から本意不本意に関わらず忍法を使い続けてきた。栄養不足に真っ先に耐えられなくなるのは自分だろう。
忍法・不生再生は手足を生やす度に血や肉を必要する、案外面倒なものだった。血が足りなければ、肉が足りなければ、生えるものも生えてこない。ある程度の栄養を摂取しなければ忍法は使えない。
けれどこの忍法は、ただ自分が生き残る為だけのものだ。
お前の忍法はつかえない、と誰に何度言われたことか。
自分でも分かっている。
前言撤回。
最初に死ぬだろう、ではなく。
最初に死んだ方が良いのだ、自分は。
こんな役に立てない自分は。

(戦う為のちからが欲しかったよ)

彼らのような強さが欲しかった。
こんな力を、私は強さとは呼ばない。
どれだけ役立たずになろうと生きてしまうのならば。


「蝶々さまっ」
遠くに見えたタンポポ色に思わず声をあげる。ぐるぐると墜ちてゆく思考に歯止めを。
腰掛けていた縁台から飛び降りた。膝を抱えていた体勢から音を立てずに着地。
この、私が座っていた縁側は蝶々さまの屋敷の場所。
彼が頭領の会合に呼び出された時は大抵此処にいる。
その間の留守を守るのは私の役目だし、もし集合が掛かるようなことがあれば皆を呼びに走り回るのも私の役目だった。
「おかえりなさーい!」
待ちきれず駆け寄ると、蝶々さまは呆れた様に「おまえさぁ」と肩を竦めた。
「ちったぁ落ち着いたらどうだ?」
「落ち着いてますよ」
 そう言い返してみても相手にはしてもらえない。恐らくは十二頭領が一人、同じ虫組のあの彼と比べられているのだろう。
(みーくんは大人っぽすぎるんだ)
彼は小さい頃から周りの子ども達より落ち着きもあったのだ。比べてはいけない。
屋敷に向かう蝶々さまの二、三歩後ろを歩きながら少し高い位置でふわふわと揺れる髪の毛を追った。






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