etc. | ナノ


良く言えばアンティーク調でこじんまりした、悪く言えば古めかしくて乾いた埃の匂いがする小さい二階建ての一階部分南端の部屋。唯一の窓は開けたすぐの場所が喫煙所になっているせいで常に締め切られている。そこが私の定位置だ。

夕方6時過ぎくらいにふと窓の外を見ると、すっかり長くなった日が最後の熱量を懸命に燃やしていて。その赤々とした残り香が部屋の中まで差し込んで、ノスタルジックな雰囲気に包んでいく。ああ、もうすぐ夏になるんだなあ、と。年齢にもキャラクターにもそぐわないような黄昏モードに暫し突入する。
コーヒーを片手に開かずの窓の前でぼうっとしてると、作業の時はあれほどせせら笑うかのように私の周りを徘徊している時間の精霊が、私ごときには眼も暮れずに残酷なほどすばやく身を翻して去っていく。オレンジ色から、水色だか灰色だか判断がつかない色を超えて、空は群青に落ちる。

某作家風に言えば、ぼんやりとした不安、だろうか。そういう時に酷く子供染みた不安感に苛まれる。私はこれで良いのか、と。この道は果たして"正しい"に繋がっているのか、と。けれど何度理論を構築しても、"灰色の脳細胞"というものをどれだけ駆使しても、人生の意義を問うような命題に人知の範囲で答えられるわけもない。だから結局は現在の選択を、出来うる事を盲目的に信じるしかないのだ。そう言い聞かせて、またPCの前に立ち戻る。

備品のインスタントコーヒーは冷めてしまうととても不味いのだけれども、多分私は何年経っても今後この味を忘れる事はないのだろう。それは既に、私の愛すべき人生の一部と化しているのだ。



2012/05/04 23:54 Happy Unbirthday!

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -