見慣れた花畑。
 髪を撫でられる感覚が心地良い。
 覗き込むような姿勢で微笑む彼女を、まだ霞んでいる目で見つめた。





愛は盲目





「あ、ごめんクロア。起こしちゃった?」
「…………いや」
 ルカに膝枕をしてもらっているうちに、つい眠ってしまったらしい。

 まだダルい体を動かし、上半身を起こす。さりげなくルカが背中を支えてくれた。
「ごめんな。あまりにも気持ち良かったもんだから、つい……。退屈だったろ」

 一体どのくらい寝てしまったのだろう。コスモスフィアの中では時間の感覚が無いので正確な時間は分からないが、少なからずルカを放って置いてしまったのは確かだ。

 自分に気を遣わせないようにだろうか、柔らかに微笑んでいるルカの、髪を撫でた。
「全っ然大丈夫だよ? ずっとクロアの寝顔見てたし。むしろご馳走様?」

 照れたように肩をすくめるルカ。そのままクロアの胸にもたれかかってくる。
「なんだよ、それ」

 苦笑いを浮かべながら、クロアはルカの肩を抱く。自然に抱き締めるような形になり、ルカの顔が少し赤くなった。
「えへへっ。遠慮なく寝顔を見せてねーってこと! クロア、いっつも守ってくれるもんね。たまには私の膝で休んでも良いんだよ」

 クロアの胸元にあるルカの手が、ぎゅっとクロアの服を握る。自分の言葉が恥ずかしかったのか、ルカの耳は真っ赤だ。
「ああ、ゆっくり休ませて貰ったよ。ありがとう、ルカ」

「ありがとうはこっちの台詞なのにぃー」
 つんつんと頬を指で突つかれる。穏やかな何気ないやり取りに、笑みが溢れた。
 数ヶ月前の自分たちでは、考えられない甘い雰囲気だ。
 
「ルカだって、詩魔法で俺を助けてくれるだろ?」
「うーん……そうかなぁ? 私、ちゃんと役に立ってるかな?」
 強気なレーヴァテイル二人を思い出したのだろうか。ルカの眉がハの字になる。

「当たり前だろ?」
 うつ向き気味の頭に手をやると、控え目な微笑みが返ってきた。
「そうかなぁ?」
「何だよ、信じてないのか?」

 ちょっとすねた風に言うと、ルカは目を丸くし、慌てて弁解をしてきた。
「そ、そういう訳じゃなくて……そ、そのぉ〜」

 目を見開いたまま、時が止まったかのようにじっとクロアを見つめるルカ。しかし、しばらくの間があった後、ルカは何事も無かったかのように明るく笑った。
「そ、そーだよね! 役に立ってるねっ! 気持ち良くて寝ちゃうくらいだもん!」
 ルカの声は上擦っていた。

「え?」
 話が飛んでいて良く分からない。首を傾げるクロアだが、自分の発言にまた顔を赤らめているルカを見て、その意味を理解した。

 傍から見れば、膝枕されながら寝るってのは、物凄く恥ずかしい光景じゃないか?
 二人は、顔を林檎のようにして押し黙った。





*


 とりあえず、ルカのコスモスフィアLv.9をクリアした後だと思ってください。
 もっとクロアをデレデレさせても良かっただろうか……。
 羨ましくなるくらい、すっごい初々しい二人になった気がする。
 少なくとも私は羨ましいぞ。





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