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三条紫は学園の人気者であり、抱かれたいランキング一位にして生徒会会長をつとめている。
美形の多い学園でも、三条ほどの容姿の者はなかなかいない。整いすぎて冷たく感じる端麗な顔は、あまり感情を表さないせいで余計に近寄りがたい迫力があった。
美形も過ぎれば、怖ろしい。圧倒的なカリスマ性で人気のある三条だが、遠巻きにされることがほとんどである。どんなに可愛らしく高飛車な生徒でも、三条を前にしては及び腰だ。生徒会役員以外で、まともに三条と話が出来るのは風紀委員長くらいだった。
周囲からはそんな扱いであったから、三条自身は自分が人気者である自覚が薄く、容姿にしたって見慣れた自分の顔が極上の美形とは認識しきれていなかった。よりにもよって、眼つきが悪くて怖がられているのではと、考えていたりした。
そういった誤解が三条の中でまかり通っているのは、主に役員たちや風紀委員長のせいなのだが。もともと三条は口数が少ないが、それを助長させているのが周りの対応だ。三条が何か言う前に、意思を汲み取って先に先にと動いて終わらせてしまうのだから、幼稚舎からの友人とは厄介だ。
幼い頃、見た目に反してぼんやりというかぽやんとしていた三条に、こいつは俺が面倒見てやらなければと考えた連中が、今の友人たちである。会計など三男で家は関係ないからと秘書検定を受ける準備をし、将来的にもサポートする気満々だ。他の面々も、後継ぎという立場をフルに利用し、自分の家と三条の結び付きを強くしようと画策している。
三条の周りは友人ないし小姑、あるいは子ども溺愛な父親のような輩が多く、そんなだから、人気に反して身体は清く童貞だった。
男でも女でも、虫は即座に駆除されてきたのだから、致し方ない。とは言え、三条とてお年頃だ。性欲は薄い方でも、皆無ではない。熱を持て余した夜もある。そういったことに関心を持つのは自然なことだ。
しかし、友人たちには言えない。過去三条が精通をむかえたと知った時に、泣きながら赤飯を炊いた奴らだ。エロ本に興味を持ったことをうっかりもらしたら、悲壮な顔で説教してきた奴らだ。
三条としては、友人を泣かせるのも悲しませるのも本位ではない。だが、こういったプライバシーに関わる話はおいそれと誰にでも出来るものではない。
悩んだ挙げ句、思い付いたのが教師に話を聞いてもらうことだった。教師ならば、生徒のプライバシーは守ってくれるだろうし、なにより学園外を知っている大人だ。
そこで、三条が話を持ちかける相手に選んだのが生徒会顧問の木戸で、用があるからと生徒会室に呼び出した。木戸は会長である三条にとっては一番身近な教師であったし、ホストのような風貌からそれなりに経験を重ねていそうだった。そんな理由での人選だったのだが、友人たちが知っていれば全力で止めていただろう。
それもそのはず、木戸は見た目タチな相手ばかりに好んで手を出す、ゲテモノ食いと言われる男だったのだ。木戸からしてみれば、三条は見事な鴨ねぎだ。舌先三寸で丸め込み、最後には若い頃喧嘩でならしたテクニックをもってしての力技で押し倒した。結果、三条は童貞よりも先に処女を喪う羽目になったのだった。しかも、初めてにしては敏感で具合の良い三条に、盛った木戸は抜かずの三発。全身ドロドロにして動けない三条は、上機嫌な木戸によって身支度を整えられた。
生徒会室に備え付けられたソファーは、すっかり湿ってそこかしこに染みが出来ている。その上で、事後の雰囲気が漂う色っぽくぐったりした三条を、横抱きにする木戸。身体中しつこく弄くり回したくせにまだ足りないのか、三条の腰をさわさわ撫でながら、木戸が甘ったるく囁く。
「…なあ、三条。いや、紫。俺と付き合おうぜ?そしたら、お前が性欲持て余してる時に相手してやるし。今日よりもっと気持ち良くしてやるぞ…?」
額にこめかみに頬に、チュッと唇が触れた。いかにも遊んでそうな甘いマスクに、軽いだけではない獰猛さが滲む危なそうな男。多くの人間にそう評されるだけの魅力をもってして、木戸は三条にすり寄る。
色事に疎い三条など、ひとたまりもない。柔らかな口付けにうっとりしながら、先程味わった以上の快楽がどのようなものかと想いをはせ、身体を震わせた。三条としては、女性と付き合い童貞喪失が望ましかったのだけれど、気持ち良かったしまあいいかなあと思っている。三条は散々周りに過保護にされた結果、ヘテロだのゲイだのバイだのの垣根が低く、偏見や先入観がない。男同士でも気持ち良くなれることを知ってしまっては、なおさらだ。
木戸の首筋に自分から顔を寄せ、腕を回す。喘ぎすぎて渇いた喉を、唾液を飲み込み潤そうとした。
「…いいぞ、付き合っても。」
性交の余韻を残す切れ長の黒眼は、未だ熱っぽく潤んでいる。その眼に覗き込まれた木戸は、再び己の興奮が首をもたげてくるのを感じていた。
了承を確認するように、木戸は事後には一度も触れていない唇に自身のそれを重ねる。身体をまさぐる手を止めもせず、侵入してくる舌を受け入れながら鼻を鳴らす三条。着せたばかりの制服を剥きつつ、今度は三回で止められるかだろうかと考える木戸だった。






*end*
三条 紫(さんじょう ゆかり)…会長
木戸(きど)…生徒会顧問


ふおおおお!!
頂いちゃいました素敵小説!
木戸先生イケメンんんんんん!!エロいよ先生!これじゃ会長堕ちちゃうのもしかたないよ!そして三条会長も負けず劣らずエロいですね!!エロいのに可愛い過ぎて生きるのが辛い…!
いやもう保護者な皆様から何から滾りました!ごちそうさまです…!

六花さん、素敵な小説をありがとうございました!!
これからもよろしくお願いします!




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