gift | ナノ


【聞いてください】



どうもはじめまして。僕の名前は朱草、私立明星学園高等部生徒会書記を務めています。有難くも役職をいただいている以外は特に何の取り柄もない、しいて言えば趣味が少し変わっているだけのごくごく平凡なしがない一生徒です。

さて、そんな面白味のない僕が今回なにを語り出すのかと言いますと、お察しのいい方はもうお気付きでしょう。そう、僕の所属する生徒会の皆様――と言っても先輩2名だけですが――の普段の様子を、是非とも聞いていただきたいのです。

突然ですが此処、明星学園は通っている生徒の約9割が何かしらの御曹司という、世界でも名の知れた学園です。しかしながらそれとは別に、同性愛が公然と蔓延っていることでも有名な学園で――つまり何を言いたいのかと言えば、僕のような趣味を持つ者にとっては垂涎モノの場所なのです。

というわけで、僕の趣味も分かっていただけただろうところで生徒会の皆様の紹介を…と思ったのですが、すみません。件のお二人がいちゃつきはじめてしまったので、早速実況に移りたいと思います。


「なーなーみなみぃ、今日つけてきたピアスどーだ? 似合ってる?」
「うん、すっごく似合ってるよ〜。あ、でも俺は昨日つけてたヤツのが好きかなあ」
「そっかあ。ん、なら明日はソレつけてくるわー」


さて問題です。このお二人の役職は何でしょう?
正解、会長様と会計様。
ちなみに最初質問をしたのが会長様で、それに答えたのが会計様です。ついでに言いますと、生徒会室のソファに座る会計様を会長様が跨ぐ形で対面していたりします。さらに言いますと、会長様は両腕を会計様の首に回していて、今にも唇が触れそうなほどの至近距離で会話をされていたりします。

……あれ? と、思いませんか。

会計様が少し間延び口調のチャラ男であるのはまったく構わないのです。寧ろ王道万歳と叫びだしたいほどには喜ばしい。しかしながら会長様のキャラがあまりにも…あまりにも王道とかけ離れているとは思いませんか?

会長様といえば完全無欠で唯我独尊、親衛隊は学園随一セフレだって数知れず、まさに学園を統べる長であり絶対君主――というのが、僕の“会長”に対する認識でした。そしてそんな俺様何様会長様と畏怖や尊敬、憧憬を一身に受けていた会長が一人の平凡な生徒に恋をし少しずつ変わっていく…そんな会長×平凡の王道展開をこの目でしかと見るために僕は生徒会役員になったといっても過言ではありません。親衛隊に虐められても会長に尽くす健気平凡、そんな平凡を溺愛する俺様会長…滾ります。

それなのにこの学園の会長様ときたら…ピアスはがっつり、アクセもジャラジャラ、毎週髪と爪の色は変わるし毎日の気分でカラコンも変わる、言動だってユルユルというチャラ男っぷり。そのくせセフレは一切おらず、それどころか学園公認で会計様とラブラブ(死語)お付き合い中というのですから王道ガン無視にも程があります。

当然、お二人を見たときの僕の衝撃といったら凄まじいものがあったのですが……。


「みーなみぃ、今日ソッチ泊まってもいーか?」
「もちろん大丈夫だよ〜。あ、でもご飯はどうする〜?」
「一緒に作って一緒に食べよーぜ? 明日は休みだしぃ、いーっぱいイチャイチャしようなぁ」


チュッと音を立てて会計様の頬に唇を落とす会長様。嬉しそうに会長様の胸元に顔を埋める会計様。

同じチャラ男でもワイルド系男前な会長様と、どこか色気漂う優男風美人な会計様のお二人はそれはそれは絵になります。
最初の頃こそショックを受けていた僕も、今ではすっかり会長×会計という新たな扉を開き本当にご馳走様ですとお二人に感謝する毎日。あ、もちろん心の中でですが。
因みに僕の目下の目標は、お二人が卒業されるまでにどうにかしてお二人のにゃんにゃんを出歯亀することだったりします。変態? いいえ、趣味の一貫です。

始終身体を寄り添わせながら生徒会室を後にするお二人に、僕は挨拶を告げつつ今日も今日とて様々な妄想を膨らませ、一人こっそりと悦に浸ったのでした。


「じゃあさ〜、明日は動けなくてもいいよねえ?」
「ばーか。…ちゃんと介抱してくれるならなー」
「もっちろん、任せて〜」


まさかそんな会話がなされているなんて露知らず。



*end*
現在私はチャラ男に絶賛はまっていましてですね…チャラ男のなんか!という非常にざっくりしたフリに見事に変化球で応えてくださいました!!さすが!チャラ男×チャラ男とか俺得すぎる!!大好きです!!!
チャラチャラした会長かわいいよう…やっぱり王道チャラ会計もかわいいよう…チャラ男かわいくてつらいですうっうっ…

不知火さん、素敵な小説をありがとうございました…!!




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