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喧嘩ップル?










「っざけんなこの野郎!」
「んなの当たらねぇんだよ雑魚が!!」



いつもの溜まり場。
代わり映えのしない面子。
そして日常茶飯事の副総長同士の喧嘩。
あぁ、また始まった…と見守るというか気にもしない部下たち。
それも仕方ない、俺たちの喧嘩を止めることが出来るのは、我らが総長くらいしかいないのだから。



「てめぇそんなんでよく副だなんて言ってられるなぁ!」
「んなことてめぇに言われたかねぇよ!」



一足跳びに近寄り、触れたと思ったら離れる。

顔を合わせた途端に喧嘩が勃発。一進一退の攻防。力は拮抗。
自らの長を敬愛しているという点以外では全く恐ろしいほどに相容れない二人。
しかしこんな二人だからこそ、総長は俺たち二人ともを副総長に指名したのだという。



「ぐっ!んのやろっ…!」
「おらぁっ!」



振り上げた拳を叩き込む。交わされ引かれる手首を捻って奴の蹴りの軌道から体を反らした。ニヤリと笑う。爛々と光る血に餓えた獣の瞳。


俺たちには、これが全てだ。
これ以上でも以下でもない。
俺たちを繋ぐものは、喧嘩以外にはなにもない。

――――だから。



「ぶっ殺してやる…!」
「はっ!殺れるもんなら、殺ってみろ!よ!!」



昨日歩いてた女は誰だったんだ、とか。



「ムカつくんだよてめぇ!!」
「うっせぇ!死に晒せ…!」



お前に媚び売ってるあの下っ端なんなんだよ、とか。



「うぜぇんだよ!」
「こっちの台詞だっ…!」
「お前なんざ、消えちまえ!!」



―――その言葉は、本心なのか、とか。



「――――っ!」



聞けるわけが、ないだろう。




しん、と静まり返る場。
右頬が、じんと熱い。

初めて綺麗に入ったストレートのダメージが案外それを繰り出した本人にもいっているようで、なんだか可笑しくてくつりと笑った。



「…お、おいお前、大丈夫、」
「はいそこまでー」



赤くなった俺の頬へと恐る恐る伸びてきた手。
しかし触れる寸前で、その手首は別の手に捕まった。



「…総、ちょ」
「はいはい、ちょっとやり過ぎよお前たち。野次馬も散った散った!」
「あ、ちょっと総長…!」
「いいから。こいつはとりあえず俺が」



いつの間にかあいつの手を止めた手は俺の手を引いていた。
この先行き着くところは、わかってる。
エスコートされ、自然に上の階―――総長のスペースへと誘われる。



「あいつは馬鹿だね」
「……」
「傷ついちゃった?」
「総長、俺は、んっ―――…」



口付けられ、押し倒される。
いつもの、慣れてしまった流れ。

俺の寂しさにつけこむこの人と、この人の優しさにつけこむ俺。



「俺なら、幸せにしてやるのに」



寂しそうに笑う男に口付ける。
ダメだってわかってる。
わかってる、のに。



(この人の隣は、怖いくらいに居心地が良い)




――――拒みきれない、弱い自分を嫌悪した。






*end*




―――――
TwitLongerより
この後きっと副総長同士はくっついて、総長には素敵な攻めが現れます



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