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例えば、最悪の選択を迫られたとして。
その時、その一瞬だけを優先することは悪いことじゃない。即時的な保身に走るのは決して悪いことじゃないと、仕方がないことなのだと。
俺にできるのはそれだけなのだと、そう、自分に言い聞かせることしかできなかった。





***





ぐちゃぐちゃと、耳障りな音がする。その音が自分の下半身から聞こえてくるのだと思うと余計耳障りで。しかし耳を塞ぎたくとも、両手をシーツから離せる余裕などあるわけがない。それになにより、その粘着質のある水音を耳だけでなく全身で感じてしまっている今、音だけ遮断したところでどうにもならないのはわかっていた。



「はっ、アァッ…んん゙ッ……!」
「気持ちよさそうだねーかーわいい」
「口休んでんじゃねーよおらっ」
「んぐっ!んーっんゔ…!」



口に無理矢理突っ込まれた逸物。一体これで何回目だ、いい加減顎が外れると苛立ちつつも、しかし咥内に広がる雄の味に意志とは関係なく脳みそが高ぶるのがわかる。ガツガツと喉の奥を躊躇なく突かれれば、馬鹿みたいに興奮して目の前がチカチカと明滅した。



「んんん゙…ッ!」
「ははっ!んっとにお口好きなんだからー目ぇトロケちゃってー」
「っこら、んなに締めんじゃ、ねーよ淫乱…!」
「ンァアッ!」



突かれる度に体の奥底が震えて後ろをきゅんきゅんと締めつけているのが自分でもわかる。我慢できずに思いきり締めた途端、ピシャリと尻を叩かれて間抜けな声が鼻を抜けた。叩かれてより締まったところで前立腺を抉られて、びくっびくっと身体が跳ねた拍子に口から猛ったモノが飛び出てしまう。その上、お仕置きとでもいうように乳首を痛いほど引っ張られるとぶるぶると震えることしかできなくて、先ほどまで咥内を犯していたモノに頬擦りする体勢から動けない。
そんなことをすれば余計締めつけてしまうとわかっているくせに、淫乱だなんだと罵りながら尻を叩いたり乳首を抓ったりするのはこいつらの好きな流れだった。



「あっ、あ゙ッ…いやあぁっ…!」
「イヤじゃねぇだろ、嬉しいんだろ?」
「やめっ、も、ゆるし…っ」
「ほらほら泣かないのー俺たちが悪いみたいでしょー?」



快感を我慢できずに、自分を犯すモノに頬を擦りつけながらボロボロと涙を流して見上げる姿は、さぞ滑稽なことだろう。
気紛れのように涙を流す目尻を拭った男の手が、すぐに容赦なく口を開けにかかる。そして再び噎せるくらい雄の匂いしかしないモノが咥内へと押し込まれた。



ふざけるな、と言ってやりたかった。
お前達が悪くなくて誰が悪いんだと叫びたかった。

流されるのは、保身だった。
俺が俺でいるために。怒りと屈辱で潰されてしまう前に。すべてを享受して流された方がいいのだと、その方が身を守れると判断したから。
自分を守るためにこうなっているのだとーーーそうでなければ、こうはなっていないのだ、と。

そうでなくてはならないと。
これは、自分の戦い方なのだとーーー…



「くっ、あ、出る…!」
「んっ、ぐっんん゙ー…ッ!!」
「ははっ、こいつもイってら」
「ひっ、はッ、ッ、ッ…!」



口一杯に広がった雄の味に一気に昇りつめた身体。
意識が明滅する中でも、当然のように、一滴も残さず飲み下した咥内。
さらに搾り取ろうと勝手にうねる体の奥。


抵抗しているのだと。これは戦いなのだと。
自分にそう言い聞かせながらーーーしかし止めどなく堕ちていく感覚に、なみだが一筋零れ落ちた。





*end*
リハビリ第一弾
フォロワーさんのリクエストでした



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