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ろくとさんへ
まともな(はずだった)風紀委員長×お口弱い会長(R15)









なににも屈したことがないような、挫折したことがないような、そんな誰よりも強いオーラを放っていた。いつだって一番上にいて、すべてを見下ろしているような、そんな男。
誰をも寄せ付けずに、一点の曇りもないかのように輝いていたお前に―――まさか、そんな弱点があっただなんて。






その貞操観念の低さは幾度となく注意してきたのに、奴は一向に聞く様子など見せなかった。何度もこれが最終忠告だと言い続けてきた。その度に嘲ったように笑うあいつを、どれだけ殴りたいと思っていたことか。
しかしいつの間にか俺の我慢も限界に来ていたらしい。だからとうとう今日、扉を開けて真っ最中なあいつが目に飛び込んできた途端、ついにぶち切れてしまったのだ。



「てめぇに学習能力はねぇのか!?いい加減にしやがれ!!!」



風紀委員室に備え付けの仮眠室。俺は今、目の前の男に向かって喚くように怒鳴っていた。ここまでぶち切れているというのに、仮にもこの学園のトップであるこの男が怒鳴られてる場面を他の生徒に見せられないと判断して、ここまで我慢した俺を誉めてもらいたい。
ガァンと壁を殴って怒鳴る俺に、憎たらしい程整った顔がニヒルに笑った。笑い事じゃねぇんだよ。ふざけんな。金髪に赤いカラコンだなんて普通だったら大惨事な装いが信じられないほど似合っていようが、俺にはただただ腹が立つもので。



「仕方ねぇじゃねぇか、誘われたら喰わねぇわけにはいかないだろ」
「黙れ!これ以上被害を拡大すんじゃねぇよ!」
「被害だなんて人聞き悪ぃな、みんな俺に抱かれたいんだぜ?」
「風紀を乱すのもいい加減にしやがれ!そのチンコちょん切ってやろうか!!」



今日という今日は許さねぇ。怒り心頭な俺を前に、しかしクズはニヤニヤと笑うだけで。
ふざけんじゃねぇよ。そのお綺麗な顔を殴り飛ばしてやりたいのを俺がどれだけ我慢してると思ってる。



「そうカリカリすんなよなぁ」
「アァ?」
「溜まってんじゃねぇの?お前もたまには抜いたら?したらきっと、すっきりするぜ」



そう言って、ニヤつきながらトンと胸を叩かれる。
信じられねぇ。こいつは、正真正銘のクズなのか。
わなわなと震える体。殴りたいのを堪えるために真っ白になるまで握りこんだ拳。



「―――ああそうだ、特別に俺が抱いてやろうか」



ついで言われた言葉に―――ぷちんと、なにかが切れた音がした
さきよりも大きな、壁になにかがぶつかる音。
気づいたときには俺は、目の前の男を壁へと押さえつけていた。壁に勢いよく打ち付けられて、痛みに歪む顔。それを見た途端、体の奥の血が煮えたぎるのを感じた。



「っぐ、てぇなてめぇ…!」
「ははっ、悪ぃな、決めたわ罰則」
「は…?」



間近に迫った顔が間抜けな声を出したのに、口角が上がる。
異常なほどに昂る欲に任せて―――ガツッとぶつかる勢いで口づけた。驚きに見開かれ、露になる真っ赤な瞳。奴の真上で両手を拘束し、空いた手でがっと顎を無理矢理開かせる。捩じ込んだ舌で、口内を蹂躙した。


今日、あの扉を開けたのがいけなかったのか。
あんな現場さえ目撃しなければ、こんなことにはならなかったか。
けれどずっとずっと―――その完璧な顔を、歪ませたいと思っていたのは、確か。



「んーっ!んんーっ」
「ん、ふ…」
「ん、んうう、んん…っ!」



そういえばこいつ、誰とヤるときも絶対キスだけはしないって噂だったな。キスは恋人としかやらないってか。意外と純情なことで。
そんなことを思い出しつつ、最初こそあった抵抗が段々弱くなってきているのを不思議に思い、閉じていた瞼を持ち上げる。
―――と、目に飛び込んできたその姿に、俺は目を見開いた。



「…っ、ん、な、おま…?」
「ふ、あ…はふ……」



真っ赤に紅潮した顔。とろりと蕩けた瞳。だらしなく開いたままの唇。そこからとろとろと溢れる唾液。
あまりに破壊力のあるその痴態に思わず支えていた腕から力を抜くと、壁づたいにずるずると崩れていく体。
―――まさか。まさか、まさか。



「ふ、は…み、るな…っ!」
「お前…」
「っ、やめ…!」



ドクリドクリとうるさく脈打つ心臓。血が上りすぎて、興奮しすぎて可笑しくなりそうな頭。
嫌がって下を向くその顎を捕まえて、無理矢理上へと上げさせる。俺を捉えるその瞳は、いつものような強い光を灯しちゃいなくて。初めて見る、怯える赤い瞳に誘われるように、俺はそっと手を伸ばす。



「嘘だろ…」
「はっ、やめ、…ふあっ…」
「お前…口のなか、弱いのか」
「っ、んな、わへ…っ!」



びくん、びくん、と不規則に跳ねる体。ただ、ただ指で舌を捕まえているだけなのに。それなのに、ゾクゾクと肩を震わせ、ぼろぼろと涙を溢す。あの天下の生徒会長の、あられもなさすぎる姿。舌を捉える手をどうにかしようと伸びてきた手も、俺の手首を掴むだけで。
―――ああ、俺は今、相当酷い顔をしているに違いない。



「そりゃ…キス拒みたくもなるわな…」
「ひや、ひやら、あ、らめら…っ!」
「ははっ、AVみてぇ」
「んぐーっ、んん、んんん…っ!」



嫌がるのを無視して舌をつまんでいた二本の指を、舌を返してやるようにぐちっと口のなかに突っ込んでやる。ぐちぐちと中を掻き回してやると、最早俺の腕にしがみついていることもできなくなったのか、ずるりと落ちた手が床を掻いた。
まさか、この王様を、指二本で支配できてしまうなんて。



「ん、んふっ、んんんん!」



指を揃えて上顎をコスコスと擦ってやる。途端に大袈裟に跳ねる腰。ぼろぼろと涙を流し、もう限界だと訴えてくるぐちゃぐちゃになった顔ににこりと笑いかけ―――上顎から喉の奥まで、ずるっと一気に擦り上げた。



「んぐぅ―――…っ!」



びくびくっと不自然に引き攣った体。ガクンと落ちた体に任せて、ずるりと口から引き抜いた。濃く変色したスラックスにひくひくと震える体は、なにが起こったのかを如実に表していて。


ぞくぞくと沸き上がる欲情。燃え上がる興奮。止まらない嗜虐心。
こいつに咥えさせたらどうなるか―――今まで自分自身でさえ知らなかった仄暗い悦びに、俺は口角をつり上げた。






*end*




―――――
TwitLongerより



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