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お岩さんへ
オネェ風紀委員長×男前生徒会長








「―――!」
「――、―――!!」



書類を届けに寄った風紀委員室。
中から聞こえてくる相変わらず賑やかな声に、思わず頬を緩ませる。こんこんとノックをすれば、中での延長線のようにどうぞ!と怒鳴られて苦笑しながら扉を押し開けた。



「相変わらず楽しそうだな、お前らは」
「会長!いいところに!」
「やぁんダーリン!いらっしゃーい」



中に入れば、そこにいたのは風紀のツートップだけ。
目を輝かせる副委員長に、きゃーっと歓声をあげる委員長。この二人だけであんな外に漏れ聞こえるほど騒いでたなんて元気だな。



「聞いてくださいよ会長!この人化粧がどうたらうるさくって!」
「なにようるさいって失礼ね、そもそもあんたが突っかかってきたんでしょう?」
「うっさいこのカマ委員長め!」
「やだぁ、オネェと言って?」



ぱちり、綺麗にウインクまでしてみせる風紀委員長に、またキモいわなんだと抗議する副委員長。仲良いねぇ、妬けるくらいだ。
持ってきた書類を渡せば、綺麗に爪を塗ってある手が繊細なタッチでそれを受け取る。真っ赤なマニキュア。



「ねぇダーリン、シャドーをね、薄紫に変えてみたのよ?どう思う?」



微笑しながらそう問われ、俺も目尻を緩めながらそっと頬に手を寄せる。



「あぁかわいいよ、この間のオレンジもよかったが、この色もよく似合ってる」



そう答えれば嬉しそうに笑う恋人の額に口づける。そのまま口まで降りていこうと屈みながらキスの雨を落としていると、がたりと大きな音がして渋々離れる。なんだ、野暮な野郎だなぁ。



「あ"ーもうあんたに救いを求めたのが悪かった!こんなオネェと付き合ってる変態会長様ですもんね!」
「こんなとはなんだ、人の恋人に失敬だな」
「こんなもあんなもそんなですよ!もういいです!好きにしてください俺は見回り行ってくるんで!」
「あらあら、そんなに怒ると血管切れちゃうわよ〜?」
「うっさい!誰のせいだと思ってんだこのカマ委員長!」
「だぁからオネェって…ってもう行っちゃったか」



バタバタと出ていってしまった副委員長に、二人で顔を見合わせて苦笑する。いやいや、彼には毎度申し訳ない。



我が学園の二大権力者兼名物カップルである、俺とこいつ。
両者ともにファンが膨大な数いるが、しかし最近は告白される回数というものが激減していた。見目麗しく仕事ができるから、ついていきたいとは思うのだが、恋仲までになろうとは思わない。いや、なりたくともなれない、自分には手に負えない、と見るだけに留まる人間が増えたのだ。

原因など、考えずとも明らかだ。
ずっと男気溢れる美丈夫だったのに、何故だか急にオカマの道に走り、オネェ言葉を駆使してオシャレするようになった風紀委員長。
対するは、男前なのにそんなオネェを全力で愛しており、更には時期的に考えて委員長をそっちに走らせた張本人なのではないかと噂される生徒会長。
そんなおかしな性癖を持った人間にわざわざ近づくなんて馬鹿なこと、誰だってしたくない。



「お前も大概俺のこと好きだよなぁ」
「お互い様でしょ」



恋人が迫られるところなんて見たくない。モテてるのを見るのも腹が立つ。そう言って提案した、俺の恋人オネェ化作戦。



(――――まさに、計画通り)



笑えるくらい上手くいった作戦。
手首に絡んでくる綺麗に手入れされた手を見ながらうっそりと笑う。



「ま、当然か、お前のためならオネェだって女装だって何だってできる自信あるからな」
「俺だってこんな奴を愛してる変態って呼ばれてもいいくらいには愛してるぜ」



百歩譲ったところで欠片も女らしいとは言えない美形に化粧が乗ると、まるで外国人かなにかのようで。艶やかな紫のシャドーが、怪しい色気を引き立てている。普段はふざけてこんな顔は欠片も見せはしないが、しかし今、俺の前で雄の顔して艶然と微笑む姿からは、恐ろしいほどの男の色気が立ち上る。

あぁやばい…欲情した。
乾いた唇を、無意識に舐め上げた。



「はっ、んな顔してんな。―――ほら、おいで」



誘われるがままに膝へと乗り上げる。

真っ赤なマニキュアで彩られた手が腰回りを撫でるのが、酷く倒錯的で興奮する、だなんて。
こいつにどんどん変態にさせられていると思うとなんだか腹立たしくて。とりあえず今日は思いっきり引っ掻いてやろう、そう思いながら身を委ねた。





*end*
男子校はわざわざ化粧禁止とかって校則なさそうですよね、という。
リクエストありがとうございました!





―――――
TwitLongerより
更新停滞期間中の気分転換SS企画でリクエストして頂きました



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