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ペンネ・ボロネーゼ


本編ネタバレ有

午後六時をまわった頃。
きっともうじき仕事を終えて帰って来るであろう彼のことを待ちながら、食事の準備を仕上げてしまおうと思い、立ち上がった。
夕食の献立はボロネーゼ風のソースで和えたペンネパスタにオニオンスープ、それからシーザーサラダ。
スープは食べる前にもう一度火にかけて温め直せばいいし、サラダの方も野菜はほとんど切ってあるから盛り付けをすれば完璧です。
メインであるパスタの方もついさっき味見をしたので、もう少し水気を飛ばせば仕上がります。
コンロの火が弱火になったことを確認し、キッチンタイマーに三分のカウントダウンをさせていた。
この際、スープも適度に温めてしまいましょう。
能力よろしくルッチ当人も猫舌であるから、あんまり熱々の食事を出してしまうと、微妙に眉根を寄せてアピールしてくるのです。
まぁその、泣く子も黙るCP9のリーダー格が食事を冷ましながら食べる様は、見ていて存外可愛らしいと思いますが。

「ただいまッポー」

扉の開く音と同時に、軽快な羽音。
こちら目掛けてピューと飛んで来た愛らしい白鳩は、私の周りをくるくると2、3週したのちに、定位置へと落ち着いたよう。

「おかえりなさい。お仕事お疲れ様です」
「あぁ」

夕食はもう少しで出来ますから手を洗って来てくださいね、と伝えました。
これを聞くと、一人と一匹は素直に洗面台の方へと消えていく。
あぁ、一体どこの親子かと思うが、いや全くその通りですね。
たまにもう一人ほど増える時もあります。
出会って五年、文字通り共に過ごしてもう四年経つか経たないかくらいだけれど、およその問題は全て時間が解決していきました。
お互いの立場諸々になんの変化もないが、当然気持ちはうつり変わる。
それこそ、驚くほどの変化をもたらしました。
時の経過というものは末恐ろしいなと、あ、タイマーに呼ばれていますね。
ピピピと鳴るキッチンタイマーを切り、コンロの火も止めた。
蓋を開ければ、トマトソースの良い香りがキッチンに漂いだす。
うん、なかなか良く出来たようです。
冷めないうちに盛り付けてしまおうと、上の戸棚から
白のパスタ皿を二枚取り出した。
すると、背後で白鳩の鳴く声が聞こえた。
洗面所から戻ってきたようです。

「......サラダボウルはそこの右下にあったか」
「? ええ、そうですよ」

戻ってきたと思えば、唐突に問われ驚いた。
すると彼は黙ってボウルを二つだし、野菜の水切りをしてからサラダの盛り付けをしていく。
こうして彼が食事の準備を手伝ってくれるのは、珍しいことではないのです。
ルッチさんの機嫌の良い日、私の体調が悪い日、何かしらの記念日。
はたして、今日はそのどれだったのでしょうか。
私はその間にパスタをお皿に移し、適温になったオニオンスープもカップに注いでから彩りにパセリを散らしました。
盛り付けられた食事とその他の食器が並ぶ食卓。
すでに卓についていた白鳩が、早く早くと急かして鳴いている。
それに従って、私達もいつもの位置へと座った。
いただきますと呟く声が二つ。
食事中の会話こそないけれど、居心地が悪いわけではありません。
これからもこうして共に過ごせる時間が、増えていけばいいなと私は願っているのです。




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