残虐な彼が好きだ。
非情な彼が好きだ。
そんな私を、人はおかしいと言う。
なにがおかしいの?
人の好みに、文句を言わないでもらいたいわ。
ただ、好きになった人がそんな人だっただけじゃない。
そんな彼を毎日見てる私は、どれほど彼に心酔しているのだろう。
「キッド」
「おせぇ」
「ごめんなさい、途中でクルーに足止め食らって」
慌てて駆け寄る。
例え、私が時間ぴったりに来たって、キッドは同じ言葉を私に投げつける。
これは、儀式みたいなものだ。
「しるか」
そう吐き捨てて、駆け寄る私の腕を痛いほど掴んだ。
「お前は誰よりも、おれを優先しろ」
「・・・はい」
素敵。
今までいろんな男を見てきたけど、私の1番はキッドだけ。
「んっ」
ベッドに突然押し倒されて、噛み付かれるようなキス。
先程から握られている腕が痛む。
きっとあざが残ってしまう。
あなたに傷つけられた証が残るんだわ。
なんて素敵なの。
「ぁ、はぁ・・・」
僅かに唇が離れる隙に酸素を求める。
いつか私は情事中にキッドに殺されるかもしれない。
そんな死に様が良いかもしれない。
服の中で、体温の低い手が私の肌を滑る。
体の芯が熱くなって、ぞくぞくして、震える。
「あぁ、んっ」
その、獲物を捕らえたような目付きが好ましい。
その標的が私だというところが、余計に私を熱くさせる。
「キッド、愛してるわ」
キッドの手が首に回る。
緩く力がこもって、余計に息苦しくなった。
私が愛を言葉にすると、彼は怒る。
怒って、私に声を出させない。
なんで怒るのか聞いたことがあったけど、それをわかって私はあえて彼を憤らせる。
薄っぺらい言葉で済ませてたまるか。
と、言われた。
それが私が抱いていた疑問の答えだった。
「お前は黙って鳴いてりゃぁ良いんだ」
あなたのためなら、私はあなたの人形になっても構わない。
被虐的嗜好の人形
2010/01/25
[back]