「船長、おかしい」
私の発言に、珍しく。
本当に珍しく、読んでいた書物から顔を上げた。
「なにがだ」
にや、っと嫌な笑み。
船長らしいけど、怪しすぎる。
「船長が怒らないなんて、おかしい」
私の頭には、船長の帽子が乗っている。
さっき、船長からくすねた。
でも、その時に船長が何もしなかったのだから、すでにおかしかった。
いつもなら、軽くだけど手や頭を叩かれて阻止されるのに。
船長の帽子を手に入れて、すごく嬉しかったんだけど・・・。
なんだか、逆に変な気持ちになった。
だからわざわざ船長の部屋に来たのに、素知らぬ顔の船長。
どうして?
「たまには好きにさせようと思ってな」
「ウソだ」
変な船長。
いつもと違う船長。
私から、離れていく船長。
「・・・やだ」
船長の前に立って、帽子を船長にかぶせた。
「ごめんなさい」
はなれないで。
いかないで。
みすてないで。
「なまえ」
手を引っ張られて、横に座らされる。
頭を優しく撫でられた。
こんな風にされるの、初めて。
「そんな子供みたいなことしなくたって、構ってやる」
「・・・はい」
私が、なんで帽子に手を出すのか。
船長には見透かされてたんだ。
「なんで今日は冷たかったの」
「仕返し、しかねぇだろ」
船長は、やっぱりいつもの船長だ。
帽子に求めた欲
2010/02/08
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