あんこと一緒にいるのが、好きだった。

あんこと色々なところへ行くが、すごく、好きだった。


僕の大好きなあんこを、僕が、こんな風にしてしまった。

「ショウくん、泣かないで」

あんこの声を、脳内で反芻する。
わからない。
僕は泣いているの?

「わたし、大丈夫だよ」

どこが?

そんな、満足に動けない体でなにが大丈夫なんだ。

あんこの手が僕の頬を滑る。

「ショウくん、わたし、気にしてないんだよ」
「バカなことを言うな、僕が、あんな」
「一緒に行くって決めたのは私だよ」

ベッドに横たわるあんこの体。
何度見ても、あんこの足は片方がなくなってる。

「だから、私のせいなんだよ」

いいや。
それは絶対に違う。

「僕の、せいだよ」

どうしたらいいんだ。

あんこの笑顔が、違う。
いつもと違うんだ。
泣きそうなその笑顔は、僕の胸をしめつける。


「ねぇ、ショウくん」
「・・・なに?」
「私、もう前みたいにどこでも一緒に行くことは出来ないでしょ?」

うん。
そうだよ、僕がそうしてしまったから。


「だから、今度からはショウくん1人で行って来て」
1人で、って。
こんな状態のあんこを置いて、行けない。
そんなこと、わかっているくせに。

「私は一緒に行けないから、その時の話を教えてね」

あんこは、そのいつもの優しい眼差しで、僕を見上げた。
こんな、僕と、これからも一緒にいてくれるんだね。

「あんこ」
「だから、泣かないで」
「・・・あんこ!」
「私のために何かしたいのなら、お願い」
「わかったから、もう、いいから」

あんこを自分にできる精一杯の想いを込めて抱き締める。

なんでこんなに、あんこのことが愛しいんだろう。

「あこ、それでも時々は、一緒に行こう」

もう、きみを危険な目に遭わせないから。

絶対に、守ってみせるから。


そう言うと、あんこは泣きながら、僕の大好きな笑顔を見せた。









大好きな彼女へ









2010/03/06
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