ショウくんがこの町にやってきて、もう何年経ったかな。
あれから、私は今でもショウくんと仲が良い。
少なくとも、私は仲が良いって思ってる。
ショウくんがどう思ってるかはしらないけど。
現在、高校2年生の私たち。
元々かっこいいというのに、ショウくんはどんどん、もっとかっこよくなっていく。
顔立ちが大人っぽくなって、身長も高いし、頭も良いし。
非のつけどころがない。
街を歩いているときなんて、何度スカウトされたことか。
そんなこと、本人は全く興味ないみたいだけど。
「あんこ」
掃除が終わって、帰りのH.R.が始まるまでのわずかな時間。
今日もショウくんが私のクラスにやってきた。
もうすでに、恒例になっている。
「今日は委員会で少し遅くなるから、先に帰る?待ってる?」
「私も先生に呼ばれてたの、そんな長くはかからないだろうけど、待ってるよ」
「そう、わかった」
一緒に帰るのが当然のことになっている。
だから、私のなかではなにもおかしいことはない。
けど、他の人たちにしてみれば全く違うみたい。
「ねぇあんこ、本当に甲本くんと付き合ってないの?」
「うん」
「毎日一緒に帰ってるのに?」
「なんか普通のことになっちゃってるんだもん」
最初は、ショウくんの怪談好きのせいで振り回されてる感じだったけど。
でも、なかなか楽しかったんだよね。
そういうのが。
「このままだと、あんこにはずーっと彼氏なんて出来ないだろうね」
「彼氏?」
「甲本くんみたいな美少年と一緒にいたら、あんこを好きになれる男なんているわけないじゃん」
例え私がショウくんと仲良くなくても、誰かが私を好きになるっていうのは考えられない。
「そういうもの、なのかなぁ」
でも。
最近、頻繁に考えてしまう。
私なんかが、ショウくんの隣にいていいのかな、って。
ショウくんは女の子に大人気。
なんの取り柄もない平凡な人間の私とは比べものにならない。
それに・・・。
私はともかく、ショウくんは彼女必要ないのかな。
友達が必要ないって言ってるくらいだし、騒がれすぎて女子には嫌気がさしてるかもしれないけど。
ショウくんなら、ショウくんが好きになった子にすぐ振り向いてもらえると思う。
私が傍にいたら、その邪魔をしちゃうんじゃないのかな。
「あんこ、聞いてる?」
「え?」
早くに用事が終わった私は、ショウくんを教室で待っていた。
それから少ししてショウくんがやってきて・・・。
「どうかしたのか?上の空だよ」
「ご、ごめん」
全然聞いてなかった。
考え事するにしても、さすがにまずかったな。
「なにかあった?」
「ううん、なにもないよ」
「・・・うそ、なに?」
私がショウくんに隠し事なんて、できるはずないか。
でも、全部を赤裸々に話すわけにもいかないしなぁ。
「あのね、私たち、ちょっとは距離置くほうが良いのかなぁ・・・って思って」
なんだか気まずくて、ショウくんの顔を盗み見る。
驚いたような、呆れているような、なんとも言えない表情。
「あんこがそうしたいと思ったの?」
「え」
「あんこが望むならそうするよ」
怒っているような口調。
さっきと違って、表情も。
「私は」
一緒にいたい。
ショウくんと一緒だと、楽しいし。
毎日面白いし。
でも、私がいると・・・。
「僕は、あんこといたいから一緒にいるんだよ」
「・・・うん、私も」
ごめんね。
と、声が小さくしか出なかった。
聞こえたか不安になったけど、ショウくんは柔らかく笑った。
「帰ろう」
「うん」
昨日も、今日も、明日も、私はショウくんの横を歩いてる。
明日もまた
2010/02/08
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