落下




「うあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!?」

僕は今、落ちている。
比喩表現でもないし、下らない冗談でもない。
僕は今――――落ちている。

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁ゛っ!?!?」

忍が引っ張り上げてくれなかったら僕はこのまま落ちて内臓をぶちまけていただろう。そして、吸血鬼の僕は再生して、立ち上がって、何事もなく地面を歩いていただろう。

「おい、忍」
「なんじゃ、お前様」

高校生の僕を幼女が持って飛んでいるというのは些か――――いや、かなりの奇行だろう。というか、ツッコミが足りない。

「もしかしてこれって失敗…」
「なっ、何を言う!お前様は儂を疑っとるのか!?失礼にも程があ――――あ、」

不自然に声が途切れた。どうした、と問い掛けようとしたのだがまた身体が落下するというデジャヴに出会(でくわ)した僕には不可能だった。

「忍ー!!!!お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」

下は森のようだが生憎、そこは狙ったかのように落下地点には木がない。吸血鬼だとしても、不死身だとしても――――。

「痛いもんは痛いんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

段々と近付いてくる地面に目を瞑ろうとしたいたが、落下地点に人が見えた。それは吸血鬼の動体視力で捉えたのだから間違いはない。間違いはないのだが、そいつは以前僕が戦場ヶ原を助けたように受け止めるように腕を広げていた――――気がした。



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