手掛かり

「あーぁ……。ロイ兄にメンチ切ったのはいいけど、どっから探そー……」

溜め息を吐いて町を適当にふらつく。行く宛もなくどうしたらいいのか分からないのがリオンの現状だ。頭を掻いて思考に耽る。

「最近傷の男がまた動いてるらしいし、まだ俺完治してないしな…。取り敢えず町のいざこざに巻き込まれないようにして……あとは、人造人間の足跡、か」

うまくいかない捜索に苛立ちが募り、空を見上げた。今日は見事な晴天で蒼く綺麗な空が広がっている。
リオンは兄のソラをふと思い出した。
無意識のうちにリオンの武器である水晶のペンダントを弄る。そのペンダントはソラが生前に大切にしていた―――所謂、形見であった。リオンが国家錬金術師の試験を受けるため、錬成陣を埋め込む際に一度砕いた。そして錬成陣を欠片に書き、錬成することで水晶の内側に錬成陣を作ることを可能にした。

「女々しいな、俺も」

自嘲の笑みを浮かべて空から町へと視線を戻した。

「取り敢えず第五研究所の残骸漁ってみるかな。あのときラストってやつもいたし」

やっと明確な目的地を決めて歩き出そうとした時、爆発音が轟いた。タイミングの悪さに舌打ちをする。爆発音がした方へ駆けていく軍人を見つけ、被っていた帽子をさらに目深に被っていると運良く話し声が耳に入ってきた。

「傷の男が出たらしい!」
「げっ、マジかよ」
「しかも戦ってるの焔の錬金術師と鋼の錬金術師らしぞ!」

軍人の言葉に身体が反応仕掛けるがぐっと抑え込み、逆の方向にある第五研究所へ脚を進めた。










瓦礫の中を探索して顔を上げると既に夕闇が町を染めていた。少ない手掛かりにリオンは舌打ちをする。

「今日はここまでにしとくか」

言葉通り切り上げてロイが中央であてがった自宅へと帰宅した。

「(賢者の石。人が材料、ね……。第五研究所の隣に刑務所も頷ける)」

ロイから聞いた情報と第五研究所で得た少ない情報を整理する。特にロイから聞いた話は情報量も多く、深いので今のうち整理しておく。


「人造人間は厳密に言うと、賢者の石にある魂分しか死なないのか。あと、第五研究所にあった石の資料っと」

唯一プロファイルが損傷も少なく残っていた。期待せずに中身を見る。

「やっぱ名簿か……。――――ん?」

何も進展がない、と諦めてパラパラと流し読みしているとふとあることに気付いた。

「これ出勤も記録してあるのか。確か第五研究所の人は皆行方不明って……。なっ、―――どういうことだ!?」

それは行方不明と判定された日付。そこには全て―――

「出勤……。研究所で何かあったのか?でも、軍の管理下で把握してないのは可笑しい。いや…まさか………賢者の石の材料になっ、た……?」

有り得なくはない。
もし賢者の石の研究内容を抹消したいのならば、記憶しているそのものを消せばいいのだ。

「有効活用、ってわけか……。でもそうなると賢者の石を研究員以外で錬成した奴がいる…」

しかし、その中に唯一賢者の石の造り方を知るマルコーの名はない。結論付けるには情報が足りない。思考を諦め、横になった。
次の目標は第三研究所。
ラストが見られたから殺すと言っていたのを思い出す。しかも自分達にとって大切な人材である人物を殺そうとしてまで。

「(やっぱり本命はあそこか……)」

微睡む思考でそう考えるとすぐに眠りに落ちた。














翌日、国家錬金術師の権限を使って朝から第三研究所へ入り込んだ。しかし、

「(やっぱり地下に繋がる道、封鎖されてるか)」

以前入った場所は塞がれていた。

「不十分だけどな」

壁を見て小さく呟く。なぜならその壁には錬成の跡が見られた。研究員に一人で回る旨を告げて研究所内を軽く徘徊する。そして誰もいない時を見計らって、その壁に扉を錬成すると急いで滑り込み再び壁を錬成した。
記憶通りに進むとラストと対面した場所に出た。倒れている男の死体から腐敗臭が漂っている。そして、堂々と立ちはだかる大きな扉。

「鬼が出るか蛇がでるか……。開けてからのお楽しみ、ね」

皮肉な笑みをのせて扉を開いた。





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