会いたいと思えば会えてしまえるもの
情報屋のアカリ。仕事は選ぶけど金次第で政府にも海賊にも協力をする、それが私だ。7年前、跡を継ぐ事なく親元を離れる事を決意した私。だからといって平凡な人生はつまらないと、相変わらずたくさんの国や島を転々としていた。
「もうすぐ島に着くかなー?」
「こんな美人ともうお別れか」
「なんだか寂しいねェ」
「ありがと!私も寂しいよ」
もちろん航海の技術はないし、海賊になるつもりもなかったのでその時その時で乗る船を探しての女ひとり旅。昔から鍛えていたお陰で強さにはある程度自信があったし、女の武器と頭脳を最大限に使いそれでも上手く生きてきた。そうしようとするうちにたくさんの人を利用し、情報を手に入れ、時にはソレを売ったりして。
そしたらいつの間にか情報屋と呼ばれるようになっていた。
「よし、とうちゃーく!」
「気ィつけろよ、またな!」
「ん!乗せてくれてありがとう!!」
「見かけたらまた乗せてやるよ!」
「その時はまたよろしくねっ」
最初の頃は海賊狩りで生計を立てていた事もあり、政府とはそこそこ仲がいい。海賊に協力する事はあるけど、一定の条件の元(政府の情報を売らない事、市民に危険が及ぶ情報を売らない事、など)特例で手配書を排除してもらっている。それでも命を狙われたりするのはよくあるけどまぁ仕方ない。悪魔の実の能力者ではないけれど、そこらの雑魚には負けない自信がある。女ひとり、強くなければやっていけないし。
「エースがまず行く所といえば、」
大食いな彼が向かう場所は決まっている。
最近までエースが付近の島にいた事は知っている。彼の移動手段を考え、この島に立ち寄るであろう事も計算済みだ。そして私が着く数十分前にエースが着いたはず。小さなこの島で食べる場所と言えば、BARが一つあるだけ。その位置もしっかりとリサーチ済み。
「お、ビンゴ」
伊達に情報屋はやっていない。
顔は見えないが、私の狙い通りに彼はそこにいた。BARに入りそのまま真っ直ぐ歩いて、少し騒がしいテーブル席の前を横切りカウンター席に座る。
「ぐかー・・・」
「マスター、医者呼ぶか?」
「そ、そうだな」
「でもイビキかいてるぞ?」
「あぁ、確かに・・・」
そのお客がひとりきりにも関わらずテーブル席なのは、カウンター席では料理が全て乗り切らないからだろう。相談をしあうマスターと他のお客に囲まれ、皿に盛られた料理に頭を突っ込んでいるひとりきりのお客。見る人が見れば、彼は死んでいると思うだろう。
「大丈夫ですよ、彼のクセですから」
「き、君は知り合いかい?」
「本当にだいじょ「っぶは!」
「「「!!?」」」
突然起きた彼に、マスターもお客も大げさなくらい反応する。ほら起きた。
「あー・・・、寝てた」
「「「寝てたのかよ!!!」」」
マスターもお客達もよく揃うな。やっぱ小さい島だからみんな常連さんなんだろうか。
「ん?みんなどうし、・・・ぐー」
「「「また寝るのかよ!!!」」」
やっぱ常連だな。
再び眠った彼に、そろそろだろうと気持ち程度のお金を支払い先に店を出る。まだ何も頼んでいないけど、このあとこの店には悲劇が起こるだろうから。なんなら全額代わりに払ってもいいけど、生憎今日はあまり持ち合わせていない。
「3、2、1・・・」
ひと足先にお店を出てから、少し離れた港へ向かう。少し周りを見回すと、隅っこに置かれた彼愛用の乗り物を見つけた。
「待て!火拳のエース!」
「なんで海軍がいるんだァ?!」
「食い逃げだー!!!」
「オッサン!美味かったぞ!」
「チクショー!金を払えー!」
待っている間、適当にカウントダウンをしてみればさっきまでいたBARの方からマスターやエース、海軍の人達の叫び声が聞こえていた。
逃げ惑うエースからしたら、こんな小さな島にこのタイミングで海軍が来るとは思いもしなかったであろう。
「ふー、危ねェ!」
「こんにちは、食い逃げさん?」
「!」
海軍達を撒いて屋根から飛び降りてきた彼に声をかければ、バッと勢いよく振り返り私の方を見た。
「・・・・・・アカリ?」
「久しぶり、エース」
相変わらずだね。
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