見たくなかった
今日は臨也に手配された動物病院へ、これまた臨也に手配されたタクシーで出かけた。
「…あれま、事故ですかね?少し遠回りになっちゃいますがスミマセンねお客さん」
「あ、大丈夫です」
予防注射や体調チェックをしてもらった際、お医者さんにあまり抵抗する事なく、おとなしい子だと褒められた。
"ミー"
「もう帰るからねー」
ちなみに子猫の名前は、可愛い鳴き声からミーという名前にした。臨也には単純すぎるって言われちゃったけど。
「…あれ、臨也だ」
病院の帰り、タクシーが信号で止まる。カゴに入ったミーをなだめたあと、ふと目線を上げると臨也を見つけた。
「すみません、脇に停めてください」
運転手さんへお願いをし、少し進んだところで車が停止した。話しかけようと窓を開けたものの、私はもう一度臨也を見た途端、固まってしまった。
「──え、」
臨也の影から女の子が出てきたのだ。とても可愛い、ふわふわとした女の子。臨也も臨也でニコニコと笑い、まるで二人はデートをしているようだった。
「…出してください」
「え?」
「私の人違いだったみたいです。すみません、もう行ってください」
もしかして昨日もあの子と?今日は大事な用事があるって、デートの事だったの?
「お客さん顔色悪いね?大丈夫?」
「すみません、少しだけ酔っちゃったみたいです」
「もしツライようなら少し寝ててもいいですよ。起こしますから」
「ありがとうございます」
運転手さんの気遣いは嬉しかったけど、寝れるわけもなかった。
それは、私が見たくなかった光景で
臨也はもう、私なんてイラナイ?